
乾いた道の その果てに 古き道標 ひとつ立つ かすれた文字は 風に削れ それでも町の 名前を指した 彼女は尋ねた この道の先 ゼノンという 歌人を見たか 老人は言う ああ 厄介な 奴だった 閉ざした傷にも 名前を返した その夜誰かが 涙を流し 失くした名を呼び 朝を迎えた 疎まれた歌 祈られた声 ひとつの名前に ふたつの影 時に蔑まれ 時に祈られ それでも彼は 真実を歌う 傷を開いて 名前を返し 風の向こうへ また歩き出す 丘を越えれば 町が見えた 剣より古き 職人の町 聖堂の旗は ここへ届かぬ 技と契約が 道を守る ゼノンは最後に そこへ向かった 誰かの声が 風に混じった 不意に夕風 影を運ぶ 若き人では もうなかった 白き髪に 旅の埃 古きマンドリンを 胸に抱く それでも背中は まだ折れず 老いた歌人が 町を見上げた 時に蔑まれ 時に祈られ それでも彼は 真実を歌う 最後の道標 黄昏に立つ 会えると信じて 彼女は進む 弦はまだ 答えを告げない 丘の向こうに 鐘なき塔 木々の匂いと 古き工房 シエラの弦が ひとつ震えて まだ知らぬ夜の 扉を叩く

