テレビの中の どこか遠い国 大統領たちが握手して 火種が消えたと報じてる そのすぐ後には 近所の山にクマが出たとか 公園から子供が消えたとか そんな騒がしい日常 たまに「パンダが産まれました」なんて 世界が少しだけ微笑むような 明るい話題も流れるけれど 僕はそれをただ ぼんやりと眺めてる まるでお風呂の栓を抜いた後の 渦を巻く水みたいに 僕の部屋の窓の外にも 伝えたい「ニュース」は山ほど転がっているのに 新聞の隅っこにさえ 載りゃしないな 誰の興味も惹かない 取るに足らない独り言 だけど あの大国の平和の行方よりも 行方不明の誰かの その理由よりも 僕にとっては もっと切実で 残酷なまでに重要なんだ 君が不意に見せた その曇り空のような表情(かお)や ポケットの底で くしゃくしゃになったままの夢のこと 捨てられもしないで まだ僕を締め付ける レンジが鳴らす 味気ない完了の合図 昨日と同じ コンビニの袋を広げた 画面の向こう 誰かのスキャンダルを叩く声 それより今 冷え切った僕の心(なか)を 温めなきゃ 数字やデータじゃ 測りきれないよ 君がこぼした あの小さな溜息の深さ 世界を救う ヒーローの物語よりも 今 隣にいる君を笑わせる 術(すべ)を知りたい 君の涙の理由(わけ)を スクープする記者はいない 僕が明日を諦めかけたことも 誰の耳にも届かない でも このワンルームの片隅で 震えているその指先こそが 僕の世界を動かす 唯一の真実なんだ どんな大事件も 霞んでしまうほど あの大国の平和の行方よりも 行方不明の誰かの その理由よりも 僕にとっては もっと切実で 残酷なまでに重要なんだ 君が不意に見せた その曇り空のような表情(かお)や ポケットの底で くしゃくしゃになったままの夢のこと 捨てられもしないで まだ僕を締め付ける 誰も知らない 僕らだけのニュース それが明日を変えると 信じていたいんだ ただ 観ているだけじゃなくて


