
MONO MONO MONO あなたは昔 尖っていた まっすぐで 傷ひとつなくて 誰より静かに わたしのそばにいた わたしが間違うたび あなたは責めずに ただ黙って その身を差し出した そうじゃないよって 言葉にしないまま 何度も 何度も わたしを やり直させてくれた あなたのカスを まとめてみたわ ものさしで そっと集めてみたけど それはあなたの 形じゃなかった ただの白いもさもさで ちょっと汚かった あなたの代わりには ならなかった バニラの匂いのする彼に 浮気もしたわ けれど彼は 消すたびに お菓子みたいな匂いだけ残した かわいい動物の形の彼にも 手を出したわ でもかわいそうで おしりから消すことしか できなかった キャラクターの形をした彼にも 心が揺れたわ だけど顔が削れるたび 罪の意識が すごかった 結局使えたのは あなただけだった かわいくもなく 甘くもなく ただ間違いだけを ちゃんと消してくれる MONO MONO あなただけだったの 教科書の偉人の顔を ヤンキーにしたことも 宣教師を増毛したことも 中二のノートに描いた BL小説も なぜか先生と 転校生が 雨の廊下で抱き合うことも 好きな人の名前を 裏紙に何度も書いて 消して また書いて 消して また書いて 消し跡だけが やけに黒く残ったことも プロフィールに 闇の翼って書いたことも 前髪で目を隠して 世界は僕をわからないって つぶやいたことも 自分で書いた歌を 夜中に読み返して これはいつか 誰かを救うって 本気で思ったことも 気になる人に 返事もないのに 二分に一回 LINE入れたことも 消せる線は あなたが消してくれた だけど 消せない記憶は わたしの中で まだ黒いまま わたしの汚いところ みっともないところ 全部 全部 あなたは こすってくれた MONO MONO M・O・N・O MONO MONO わたしの影も 残らぬように わたしを 消し去って 紙が破れるくらい 強く もう読めないくらい 白く もう戻れないくらい 深く わたしを 消し去って だけどあなたは もう小さすぎて 箱の隅で 白いまま 何も言わずに 丸くなっている ねえ MONO あなたが消してくれたのは 文字だけだったの 本当は わたしが わたしを 許したかっただけなの MONO MONO M・O・N・O MONO MONO 文字も 線も あの日の落書きも あんなに白く 消してくれたのに どうして どうして わたしは 消してくれなかったの

