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椿落とし

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さても今宵は 月冴ゆる 赤き椿の 影ひとつ 人か 鬼か 修羅か 夢か その名を問えば 首が飛ぶ 道を外れし 者どもよ 伏せよ 黙れ 花となれ これより始まるは 椿落とし 月の石畳 カンと鳴った 夜の唇 赤く裂けた 椿の簪 ゆらり揺れりゃ 誰もその子の 名を知らない 着物の裾に 風が走る 白い指先 柄を撫でる 人も妖も 道を外せば 同じ月影 同じ首 かわいそうなど 言わないで 罪なき首が 夜に鳴る 返せ 返せと 血が歌う 落とされた者の 数え歌 咲いて散るなら まだ甘い 椿は黙って 首から落ちる 落ちろ 落ちろ 椿落とし 赤く咲いたら 夜へ落ちろ 斬れよ 斬れよ 月を裂いて 道を外れた その首を 花に変えろ 涙で書いた 無実の札を 笑った口から 落としていく 嘘の掟を 重ねた奴も 祈りの皮で 人を喰う奴も 鳥居の影で 鬼が震える 橋の向こうで 人が笑う どちらが化け物 問う暇もなく 椿の赤が 道を塗る 細い腕だと 侮るな 千の恨みが 筋を引く 知らぬ手つきで 鞘を払えば 落ちた首たちが 夜に笑う 咲いて誇れば もう遅い 椿は命を 丸ごと落とす 落ちろ 落ちろ 椿落とし 首を垂れるな 花となれ 舞えよ 舞えよ 刃のまま 人も妖も 罪も夢も ひとつに落ちろ カン カン 拍子木が鳴る ポン ポン 鼓が笑う 月は見ている 首は覚えている 誰が裁いた 誰が笑った 誰が無実を 土に埋めた 赤い椿が ぽとりと落ちる その音だけが 弔いだった 咲いて散るなら まだ甘い 椿は黙って 首から落ちる 落ちろ 落ちろ 椿落とし 月の下まで 赤く落ちろ 斬れよ 斬れよ 闇を裂いて 道を外れた その首を 花に変えろ 落ちろ 落ちろ 椿落とし 名もなき無実が 夜を駆ける 舞えよ 舞えよ 刃のまま 朝が来るころ 道に残るは 赤い椿 月が沈めば 影も消える 誰もその子の 名を知らない ただ石畳に ぽとりとひとつ 赤い椿が 落ちていた