
ああ、パスワードが思い出せない 君の名前を忍ばせたつもりだったのに キーボードを叩く指が震えて 二分の一の暗号さえ崩れ落ちる 最後に繋いだテレフォンの音 今となっては幻の響き 画面の向こうで待っているはずの君も この手の中には、もういない 数字か、記号か、それとも言葉か 忘却の海に沈めた鍵はどこだ? 君と笑い合った夜の記憶も この瞬間だけは、裏切り者になる 「ヒントは?」と問いかけてくる窓 ヒントなんて知らない 僕が求めているのは君だけで 他の全ては要らないんだ 退廃的な美しさをもつその羅列 君が残した最後のメッセージのように でも僕は、触れることもできない この距離が、こんなにも切ない 「一緒に作ったパスワード、覚えてる?」 答えは風のように去り、僕だけが残る 空白の夜がまた始まる 僕と君の記憶を隔てる この無慈悲な画面を睨みながら ああ、パスワードが思い出せない 君への道がここで終わるなんて 半分の思い出じゃ、全然足りない どうか、最後の鍵を返してくれ。

