歌い終えた 広間の空気は 刃のように 冷たく沈む 幼き王は 涙を拭えず 白き騎士らは 目を伏せていた 監国査察官は 静かに立ち上がり その歌は異端と 低く告げたり 真実を騙る 魔女の弦など この城に置くは 災いとなる 幼き王は 震える声で 彼女を裁くなと 命じたけれど それは救いか それとも鎖か 保護の名のもと 塔へ送らる 閉ざされし塔 石壁の奥 風さえ細く 裂けて通る そこにはひとり 老いた宰相 裏切り者の名で 時を数える シエラはそっと マンドリン抱き あの歌の意味を まだ知らずにいた わたしは何を 歌ったのだろう なぜこの弦は 震え続ける 老いた宰相は 静かに笑う そなたの歌に 救われた者だ されど救いは わしには過ぎる 王の命を 守っただけよ 昔そなたの ような者に 一度だけ会った ことがある 真実を歌う 吟遊詩人 名を捨てた者 歌だけを持つ者 その名はゼノン 風のように来て 傷のような歌を 残して消えた ゼノンの名が 塔に落ちた時 シエラの胸は なぜか痛んだ 覚えはない 知らぬ名なのに 弦の奥だけ 小さく鳴った 塔の外では 若き部隊長 エリアスひとり 扉の前に立つ 魔女と呼ばれし 少女の歌は 人を惑わす ものには聞こえず 祈りにも似て 弔いにも似て 石の廊下を 静かに満たす ゼノン ゼノンと 名だけが残る その名の意味を 誰も知らない されど弦は 眠りの底で 誰かの指を 覚えていた これはまだ 名を返す歌ではない 名へと辿る 最初の歌 閉ざされた塔に 一音が落ちる ゼノンの名を 胸に残して