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孤月夜行(こげつやこう)

V4.5+

夜空に沈む孤月が わたしを見下ろしている 消えたい影が脚を引きずり 誰にも届かぬ叫び声 静謐なる校庭にひとひら 空虚さまよう名もなきこころ 教室が悪意に染まるとき 机の落書きがわたしを彫る 「最低」だと呟かれた吐息の罠 透明な檻、息を止めて数える午後 告白の返事 空虚な笑顔 崩れ落ちる誇りも 鋼鉄の仮面(マスク)で隠し通した 少女の小さな反撃も 嘲りの標的になり果てるだけ 認めてほしいの認められたいの けれど誉め言葉は棘 白い花束 誰もくれない 冷たい水面に息を潜めるだけ 粉々(こなごな)の鏡のむこう わたしが映らない 黒い風が心の中 荒れ狂う 好きの一言で 壊れた日常 「大丈夫?」誰のための言葉 少女は夜に沈み込む 孤月がやさしく見下ろしている 夜ごと胸を縛る呪い 逃げ場のない箱庭 「消えてしまえ」と囁く緋色の月 掌の傷すら 大人たちの飾り窓 痛みの意味もわかってくれない 同い年の笑顔が 地獄(じごく)の仮面 秘密の傷跡、制服の下 「いい子」でいることの重さ 誰も見ない 誰も知らない 屋上の鉄扉開けて 空の青さが憎かった 嗤(わら)ってよ クラスメイト 私の人生なんて飾り石 記念写真の隅にすら残らない 息の詰まる朝焼け 足元に積もる名前のない泥 生きる意味叫ぶほど 喉が引き裂けて 澱(おり)沈むだけ 割れガラスの心臓 誰も拾ってくれない 認められたいやましさだけ 胸の奥 腐ってゆく ごめんねを飲み込んで 今日も歩く 零れ落ちる涙 少女はまだ誰にもなれないまま 教壇の奥に咲いた花(はな) いびつな形で枯れていく 膝小僧を抱えたまま 夢を見てはいけないと言い聞かす 青白い月明かりの下 わたしの意思は失われぬ 薄氷でできた羽根 風さえも冷たく纏うのみ 「さようなら」呟く声を隠して 最後の祈りを空に放つ 誰も知らぬ痛み 誰も聞かぬ唄 世界の片隅 消えたい衝動だけ 踊り狂う 粉々(こなごな)の鏡のむこう わたしが映らない 黒い風が心の中 荒れ狂う 好きの一言で 壊れた日常 「大丈夫?」誰のための言葉 少女は夜に沈み込む 孤月がやさしく見下ろしている 足元に散るは白き花びら ひとしずく、冷たい闇へ 月に抱かれ眠る影 舞い降りし夢の彼方 静けさだけが頬を撫でる 終焉の朝焼け 誰にも知られぬまま