薪を割る音が遠くへ遠くへ 夜のガラス越しに薄く反響して 腕だけが覚えてる労働の重さ (どこかで)誰かがシャンパンを開ける 泡が喉を降りていく 軽く軽く その部屋に私はいない 光る皿の星座 ところで食べたいもの 欲しいものは? 空腹は嘘をつく 「まだ歩ける」って囁いて 疲労は黙って潜んで プロメテウスの盗んだ欠片 火は赤く赤く 燃えるのは内側から 折れるのは内側から 泡で満ちた祝杯も 癒やせない 癒やせない 疲れると食欲も感じないのはなぜだろう 七日間眠らなかった男は 飢えにも渇きにも耐えた 八日目の朝 自分の名前を忘れた 月が彼を照らす 帰る者だけが輝く夜 割れたガラスに 自分の値札を探す スパイスを挽く シナモン カルダモン ただの粉に過ぎないが 唾液が滲む飢えの文法 心と裏腹に 胃を変えていくんだもん シャンパンを開ける音が夜の奥から聴こえるよ 火の番をしている 赤い薪が崩れるのを見ている 身体は今夜も酷使される 飢えは墓穴を掘る 疲労が墓穴を隠す 泡は穴に届きもしない 浮かぶ泡沫 斧は壁に立て掛けてある 柄の木目をなぞる触覚 息が上がる触覚 あいつが黄金に変えるなら 俺は触れたものすべてを冷たくして 疲れると食欲も感じないのはなぜだろう 赤い薪は炉の中で 静かに朽ちていく 許されるのは眠りだけ 黒く炭 白く灰 薪は赤く 炉の中で静かに朽ちていく 黒く炭 白く灰 それを 見ている 見ている (まだ消さない)


