
満月まであと2パーセント
[intro] ベランダで 月を充電する 延長コードを 夜へ伸ばして 白く欠けてる 丸い背中に 差し込み口を 探していた [verse 1] 昨夜の月は 少し暗くて 返事みたいに 雲へ隠れた 誰にも照らせと 言われすぎて バッテリーまで 減ったのだろう [chorus] ベランダで 月を充電する 洗濯ばさみが 風を押さえる 物干しざおに 夜を引っかけ 銀色の残量を 見つめていた ベランダで 月を充電する 星は小さな 通知ランプ 遠くのビルが 既読をつけて 空の画面が 少し明るい [verse 2} 充電中は 触らないでと 誰かが言った 気がしたから 私は黙って しゃがみこんで 冷えた床から 空を見上げた 欠けたところは 故障じゃなくて 疲れた分だけ 眠ってるだけ 満ちる途中の 不完全さを 夜は静かに 許していた [pre-chorus] スマホの電池は すぐ戻るのに 心の残量は 読めやしない 私もどこかに 差し込めたなら もう少し白く 光れるだろうか [chorus] ベランダで 月を充電する 誰にも見えない 家事みたいに 明日の暗さを 少しでも減らす そんな係に なったつもりで ベランダで 月を充電する 満月まであと 二パーセント 急がなくていいと 言いたいのに 朝が向こうで 待機している [verse 3] 風がコードを 揺らしただけで 月の輪郭が 少し震えた 落ちないように 手を伸ばしても 届かないことは 知っていた それでも私は 待っていた 光が戻る その瞬間を 自分じゃないものが 回復するのを 自分のことのように 祈っていた [Final chorus] ベランダで 月を充電する 夜更けの街は 低電力モード 眠れない窓が いくつも並び 誰かの孤独も 点滅してる やがて月が 少し明るくなり コードの先で 静かに笑った ありがとうとも 言わないままで 空の高い場所へ 戻っていく [outro] コンセントには 何も残らず ベランダだけが 冷えていた 満ちていく月を 見送りながら 私の胸も 少し灯った


