【Navigation Map】 (ギターの高速カッティング) (ヴィブラフォン) (短いブラス) 【Singer A/Wind】 海(うみ)は右(みぎ)へ 行(い)けと言(い)う 雲(くも)は左(ひだり)へ 急(いそ)げと言(い)う 【Singer B/Rudder】 地図(ちず)を開(ひら)いて 鉛筆(えんぴつ)を置(お)く まだ白(しろ)い未来(みらい)に 一本(いっぽん)の線(せん)を引(ひ)く 【Duo/Separate Rhythms】 行(い)き先(さき)を 決(き)めていないことは 何(なに)も考(かんが)えていないことじゃない 迷(まよ)いながら 海(うみ)を見(み)ている時間(じかん)も 私(わたし)の航海(こうかい)は もう始(はじ)まっている 【TURN 1 ― Port】 (2/4の短い小節) (右へ転調) 【Singer B】 室津港(むろつこう)を 見下(みお)ろす小(ちい)さな山(やま) 丸(まる)い稜線(りょうせん)は 地蔵菩薩(じぞうぼさつ)が持(も)つ 宝珠(ほうじゅ)に似(に)ていたという 弘法大師(こうぼうだいし)は この地(ち)を霊地(れいち)と定(さだ)め 延命地蔵菩薩(えんめいじぞうぼさつ)を 刻(きざ)んだと伝(つた)わる 宝珠山(ほうしゅざん) 真言院(しんごんいん) 津照寺(しんしょうじ) 地元(じもと)で呼(よ)ばれる もうひとつの名前(なまえ) 津寺(つでら) 港(みなと)と寺(てら)が ひとつの呼吸(こきゅう)で 生(い)きてきた場所(ばしょ) 【Singer A/Wind】 出(で)てゆく船(ふね)へ 追(お)い風(かぜ) 戻(もど)ってくる船(ふね)へ 潮(しお)の匂(にお)い 風(かぜ)はいつも 同(おな)じ向(む)きには吹(ふ)かない だから船(ふね)には 舵(かじ)がある 【TURN 2 ― Crosswind】 (2/4) (左へ転調) (バリトンサックスが入る) 【Singer A】 進路希望(しんろきぼう)の紙(かみ) 第一希望(だいいちきぼう) 第二希望(だいにきぼう) まだ書(か)けない 三本(さんぼん)の空欄(くうらん) 友達(ともだち)は もう決(き)めたと言(い)った 先生(せんせい)は そろそろ考(かんが)えようと言(い)った 家(いえ)では 向(む)いている道(みち)を勧(すす)められた みんな 私(わたし)のために言(い)ってくれる だからこそ どの声(こえ)が 自分(じぶん)の声(こえ)なのか 分(わ)からなくなる日(ひ)がある 【Singer B/Rudder】 風(かぜ)の意見(いけん)を 聞(き)くことと 風(かぜ)に全部(ぜんぶ) 任(まか)せることは違(ちが)う 地図(ちず)にない道(みち)を 選(えら)んでもいい 途中(とちゅう)で 線(せん)を引(ひ)き直(なお)してもいい 一度(いちど)決(き)めた進路(しんろ)が 一生(いっしょう)の方角(ほうがく)に ならなくてもいい 【Rudder Fill】 (マリンバが下降) (ミュートトランペットが上昇) (二つの旋律が交差する) 【TURN 3 ― Storm of 1602】 (2/4) (調性が不安定になる) (ドラムが荒れる) 【Singer A/Wind】 慶長七年(けいちょうななねん) 千六百二年(せんろっぴゃくにねん)の秋(あき) 室戸沖(むろとおき) 山内一豊(やまうちかずとよ)の船(ふね)を 暴風雨(ぼうふうう)が襲(おそ)った 空(そら)と海(うみ)の境(さかい)が消(き)え 進(すす)む向(む)きさえ 分(わ)からなくなったとき どこからともなく 大僧(だいそう)が現(あらわ)れ 船(ふね)の楫(かじ)を取(と)ったと 寺(てら)に伝(つた)わる 【Singer B/Rudder】 波(なみ)を力(ちから)で 止(と)めたのではない 嵐(あらし)を消(け)したのでもない 変(か)わり続(つづ)ける風(かぜ)を読(よ)み 船首(せんしゅ)を 安全(あんぜん)な港(みなと)へ向(む)けた 室津港(むろつこう)へ 船(ふね)が入(はい)る 振(ふ)り返(かえ)ると 大僧(だいそう)の姿(すがた)はない 津寺(つでら)を訪(たず)ねれば 本尊(ほんぞん)の地蔵菩薩(じぞうぼさつ)が 濡(ぬ)れていたと伝(つた)わる 楫取地蔵(かじとりじぞう) 海(うみ)を渡(わた)る人(ひと)たちが 今(いま)も呼(よ)ぶ名前(なまえ) 【Mid-Song Key Change】 (ベースが一拍止まる) (ブライトメジャーへ転調) (Singer AとSinger Bが リズムの役割を交換する) 【Only Center Chorus】 進路(しんろ)は 風(かぜ)だけに決(き)めさせない 向(む)かい風(かぜ)なら 舵(かじ)を切(き)ればいい 追(お)い風(かぜ)だって 行(い)き先(さき)を選(えら)ぶのは私(わたし) 迷(まよ)うたび 何度(なんど)でも持(も)ち直(なお)せ 正解(せいかい)の港(みなと)が ひとつじゃなくても 今(いま)の私(わたし)が 信(しん)じる方角(ほうがく)へ 津照寺(しんしょうじ) 楫取地蔵(かじとりじぞう)の 見(み)つめる海(うみ)で 未来(みらい)を選(えら)ぶ手(て)は ここにある この手(て)で 私(わたし)の舵(かじ)を取(と)る 【The Song Leaves Its Chorus】 (サビの旋律には戻らない) (ギターとブラスが新しいコードへ進む) 【TURN 4 ― Fire and Return】 (2/4) (Singer Bがシンコペーション) (Singer Aが真っ直ぐな8分音符) 【Singer B】 津寺(つでら)には もうひとつの楫取(かじとり)が伝(つた)わる 本堂(ほんどう)に 火(ひ)が迫(せま)った夜(よる) 地蔵菩薩(じぞうぼさつ)が 僧(そう)の姿(すがた)となり 村人(むらびと)へ 危険(きけん)を知(し)らせたという物語(ものがたり) 水難(すいなん)から 舵(かじ)を取(と)る 火難(かなん)からも 命(いのち)の向(む)きを変(か)える 守(まも)ることは 代(か)わりに生(い)きることじゃない 危険(きけん)の先(さき)にある道(みち)を 気(き)づかせること 【Singer A】 長宗我部氏(ちょうそかべし)に 守(まも)られた時代(じだい) 山内氏(やまうちし)から 田地(でんち)を寄(よ)せられた時代(じだい) 栄(さか)えた寺(てら)にも 明治(めいじ)の改革(かいかく)で 荒(あ)れた時間(じかん)があった 寺名(じめい)を失(うしな)い 十数年(じゅうすうねん)の 空白(くうはく)を越(こ)え 明治十六年(めいじじゅうろくねん) 千八百八十三年(せんはっぴゃくはちじゅうさんねん) 津照寺(しんしょうじ)の名(な)は 再(ふたた)び戻(もど)った 進路(しんろ)を外(はず)れた時間(じかん)も 物語(ものがたり)の外(そと)ではなかった 【TURN 5 ― 125 Steps】 (最後の2/4) (転調ではなく音域が上がる) 【Alternating Duo】 一段(いちだん) まだ港(みなと)が近(ちか)い 五段(ごだん) 潮(しお)の匂(にお)いが強(つよ)い 十五段(じゅうごだん) 息(いき)が少(すこ)し速(はや)くなる 三十段(さんじゅうだん) 朱色(しゅいろ)の門(もん)が見(み)えてくる 鐘楼門(しょうろうもん) 竜宮城(りゅうぐうじょう)のように 石段(いしだん)の途中(とちゅう)へ立(た)つ 五十段(ごじゅうだん) 後(うし)ろを見(み)れば 室津港(むろつこう) 七十五段(ななじゅうごだん) 前(まえ)を見(み)れば まだ続(つづ)く坂(さか) 九十段(きゅうじゅうだん) 誰(だれ)かの速(はや)さを 気(き)にする余裕(よゆう)がなくなる 百段(ひゃくだん) 自分(じぶん)の呼吸(こきゅう)だけが 確(たし)かなリズム 百二十四段(ひゃくにじゅうよんだん) 最後(さいご)の迷(まよ)いを 持(も)ったまま 百二十五段(ひゃくにじゅうごだん) 答(こた)えが出(で)ていなくても 本堂(ほんどう)へ着(つ)く 【Above Murotsu Port】 【Singer A】 太平洋(たいへいよう) 室津川(むろつがわ)の河口(かこう) 小(ちい)さく見(み)える船(ふね) 曲(ま)がりながら続(つづ)く 室戸(むろと)の海岸線(かいがんせん) 【Singer B】 高(たか)い場所(ばしょ)へ来(き)たから 未来(みらい)が全部(ぜんぶ) 見(み)えるわけじゃない でも 見(み)えなかった道(みち)が ひとつ増(ふ)えることはある 選(えら)べる方角(ほうがく)が ひとつ増(ふ)えることはある 【Decision Coda】 (ギターは直線的) (ブラスは曲線的) (二度と同じフレーズへ戻らない) 【Singer B】 私(わたし)の進路(しんろ)を 誰(だれ)かに決(き)めてほしい日(ひ)もある 間違(まちが)えたとき 自分(じぶん)のせいに したくないから 【Singer A】 それでも 自分(じぶん)で選(えら)んだ道(みち)なら 曲(ま)がり直(なお)すことも 自分(じぶん)で選(えら)べる 失敗(しっぱい)は 沈没(ちんぼつ)じゃない 現在地(げんざいち)を知(し)るための 新(あたら)しい目印(めじるし) 【Duo】 港(みなと)は 帰(かえ)るためだけの場所(ばしょ)じゃない もう一度(いちど) 出航(しゅっこう)するための場所(ばしょ) 津照寺(しんしょうじ) 今日(きょう)の風向(かざむ)きを 確(たし)かめたら 両手(りょうて)を 自分(じぶん)の舵(かじ)へ まだ白(しろ)い地図(ちず)に 私(わたし)だけの 航路(こうろ)を引(ひ)く 進路(しんろ)は 私(わたし)が選(えら)ぶ。 【Dry Ending】 (ブラスのユニゾン一音) (スネアのリム音) カッ カッ カッ


