消えかけた数字を 指先でなぞる 流されていく投稿の底 開かれないまま薄れるりんかく 乱れた光を拾い集め 見やすい色へつなぎ直した 歌い続けるカーミラの影 止まらない声を画面に残す 誰も知らない数秒の裏で 僕の指だけ忙しく動く 綺麗だったとか すごかったとか 完成したものだけ見て 好きな言葉を置いていく それでいい 反応さえあればいい 誰の目に何が映ったかなんて 数えられないなら同じだろ 数字になれば残る 数字がなければ消える そういう画面を僕は 誰より知っている 光る口元を貼り直して 何もないふりで笑えばいい 空いたままの一か所くらい 見えないようにしておけばいい 通知も鳴らない返信欄 一番下に弱い明かり 歌でも衣装でも乱れでもない そこに気づくんだ 変わってるね 「途中から見やすくなりました 調整した人、ありがとう」 短い一文 名前もない なのに指だけ先へ進まない 削除の欄を開いたままで 使えそうな理屈を並べる 記録のため 分析のため 改善用のサンプルとして 削除できない理由 ひとつも必要ないはずで 固定するほどでもなくて 保存する価値もないはずで 一人分なんて、誤差なのに 順位も何も変わらないのに 数字にならないその一行が 空白だけを正確に埋める 画面を閉じて また開いた まだあることを確かめた 消していないだけだと言って ネオンの笑顔を戻してみる 見られることと 知られること どうやら同じじゃないらしい 名前も残らない指の動きが 誰か一人の視界に残った 軽い信号のその重さを まだ価値には変えられない だから消さずに 持ち上げもせず ただ何度でも確かめている 笑った顔を映したあとで そうさせんが一瞬止まる 誰にも聞かせるつもりはなくて ちゃんと見えてたんだ 沈んだウィンドウ 消えない一文 閉じた画面の向こうで 小さな明かりが残る


