
夕暮れの 古戦場 千切れた幟が 風に鳴く 兵どもの 夢の跡 薄の波を 分けてゆく 烏が一羽 二羽 ついてくる 誰かが私を 烏女と呼んだ 何を探すかも 知らないで 靴の先まで 赤く染めて 千切れた鎧に 触れるたび あなたじゃないと 祈ってる あなたかもって 恐れてる 便りひとつも 来ないまま 帰ろう 帰ろう 帰れない 泡沫のあなたを 探してる 夕暮れよ どうか沈まないで その姿まで 攫わないで 見つけない 見つけない 見つけたい あなたの指を その声を 死なないで 死なないで 生きていて 私の名前を 忘れても 焼けた襷を 拾い上げ 見慣れた結びを なぞる指 川べりであなたが 笑った日 故郷の水の 匂いがした 眠れる人々 数えながら 瞼の裏で あなたを呼ぶ 烏は空へ 飛んでゆき 赤い空から 月が昇る 生きているなら 声を聞かせて 死んでいるなら 手を見せて どちらでもいいと 言えたなら こんなに心は 痛まない 月よ 月よ 照らしてよ 泡沫のあなたの 行方を 薄よ 薄よ 揺れないで あなたの足跡 消さないで 見つけない 見つけない 見つけたい あなたの指を その声を 帰ろう 帰ろう ふたりきり 母の待つ あの故郷へ 私がもしも 見つけたなら あなたは私を 見つけるでしょう 夜の色より 黒い羽 涙の数だけ 空を舞う 月よ 月よ 照らしてよ 泡沫のあなたの 行方を 烏よ 烏よ 夜を越えて ふたりの帰る道を 教えて 見つけない 見つけない 見つけたい あなたの指を その声を 死んでいても 生きていても あなたを連れて 帰りたい 帰ろう 帰ろう 聞こえない声で 月に揺れる 薄の中 私はまだ あなたを探す

