
[一番] あんたの背広の 肩にまだ あたしの暮らしが ついている 安い煙草と 夜の雨 落として行くなら きれいに落としな 四畳半から 見た夢を あんたは立派に 着替えたね 錆びた流しの 水の音 知らない顔して 昇って行くのね 約束なんて 紙より薄い 濡れれば貼り付く それだけさ あたしの名前を 消した手で 誰の腰など 抱くつもり 上へお行きよ どこまでも あたしを踏んで 上へお行きよ ガラスの街が 見える頃 あんたの靴に 泥が咲く 上へお行きよ 振り向かず 涙もろとも 置いてお行きよ 高いところで 酔ったなら 地面の寒さを 思い出せ [二番] あんたの財布が 軽い夜 焼酎一杯 分けたっけ 今じゃ銀座の 灯を連れて 知らない女と 笑うのかい あたしが買った 赤いタイ 出世の祝いに 締めたまま 別れ話を するなんて ずいぶん偉く なったもんだね 銀座の灯りは 表だけ 裏では女が 泣いている あんたの未来を 磨くたび あたしの爪だけ 黒くなる 上へお行きよ 上へ行け 二度と下には 戻るなよ 上へお行きよ どこまでも あたしを忘れて 上へ行け あんたが星に なったって あたしは空など 見上げない だけど最後に 落ちる夜 受け止めるのは あたしだけ 上へお行きよ 上へ行け あんたの靴に 泥が咲く

