朝からずっと鳴っている 工事の音と テレビの声は途切れたまま 誰も気にしていない 昨日買ったパンの味を 思い出せないままで 何事もなく今日が またはじまる 交わした話の続きを 覚えていないまま 午後の端から少しずつ 影が伸びていく 当たり前だったことが 何事もなく続いていて その中に立っている 少し伸びた髪の長さも 減っていく電池の残量も 同じように進んでいく 雑踏の音が続いている それだけの午後 遠くで鳴ったサイレンも いつしか消える 手を振る人の横顔を 何人も見送って そのたび夕暮れだけが 少し近くなる 新しいことは何もなく 人の声だけ流れてる 気付けば夕方になって また灯りがついていく 当たり前だったことが 何事もなく続いていて その中に立っている 開いたままの扉の先にも 言いかけたままの言葉にも 同じように影が落ちる 当たり前だったことが 何事もなく続いていて その中に立っている 遠回りした帰り道の色も 見慣れた町の匂いもまた 今日の中へ溶けていく 新しいことは何もなく また灯りがついていく


