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原曲キーで入れたのは誰だ

V5.5

原曲キーで 入れたのは誰だ その送信ボタンを 押したのは誰だ リモコンの画面で あの冬の曲を見つけた 友達がポテトを食べながら いいじゃんって笑った わかっていた サビが高いこと 知っていた 人が住めない音域だって でも私は 平気な顔で キーを下げるボタンを 見なかったことにした 予約完了 イントロが鳴る 戻れない扉が 静かに開いた Aメロはまだ いける気がした 今日の私 喉の調子いいかも Bメロの奥で 空気が薄くなる 画面の歌詞が 崖へ進んでいく 原曲キーで 歌っている私 もう戻れない もう下げられない 体をひねった 反り返った 地団駄踏んでも 届かない 原曲キーで 入れたのは誰だ 犯人はたぶん 送信した私 サビの階段が 空まで伸びる 友よ手拍子を 今すぐやめて 白い季節の名曲を 原曲キーで歌ってる 私の声は 粉雪じゃなくザラメ雪 雪の華どころか 喉の奥には 枯れた枝しか 咲いていない ゲレンデより先に 私の喉が溶けた ロマンスの神様は ドリンクバーへ行っている マイクを離した 笑顔でごまかした 語尾を丸めて 心を折り畳んだ だけど音程バーは はるか上空 私の声だけ 地上に残った 複式の神よ 降りてきて この喉じゃなく 腹から救って 今だけ私を プロにして せめて最後の 母音だけでも 原曲キーで 戦っている私 もう逃げられない もう止められない 腰を入れた 膝を使った そんな理屈で 出るなら苦労しない 原曲キーで 笑ったのは誰だ Aメロの余裕を 信じすぎた私 裏声は救済じゃない 避難経路だ 友よ優しさで 見守らないで サビの階段が 雲まで刺さる 私の酸素は もう残ってない サビ二回目 来るの早くない? 喉が言った ここからは契約外です 私は言った そこをなんとか 喉は言った 有給をください 私はマイクを 天へ向けた 気づけばデスボが ほとばしっていた 声が過労死した 原曲キーで 入れたのは誰だ 部屋の全員が 目をそらした 体をひねった 反り返った 地団駄踏んだ 魂も飛んだ 原曲キーで 歌いきった私 最後の高音で 喉が退職した サビの階段が 星まで届いた だけど私は 地上にいた ただマイクだけが 汗で光った 採点画面が 静かに開いた 点数よりも 先に友達が言った でも 気持ちは 入ってたよ それはたぶん 褒め言葉じゃない 原曲キーで 入れたのは誰だ 私だ 次は 二つ下げる