
渡し火
+ Show full styles
戦乱が続く時代。 国と国を隔てる一本の橋があった。 その橋は「紅蓮の橋」と呼ばれていた。 幾度も戦火に包まれながら、不思議と橋だけは焼け落ちなかった。 人々は言った。 「橋には、争いを拒む魂が宿っている。」 ある日、橋の上で一人の青年は一人の少女と出会う。 敵国の者だと知りながら、 二人は言葉を交わし、同じ夕焼けを眺め、同じ未来を夢見た。 青年は剣を学び、 少女は薬草を育てていた。 二人が願ったのは、天下ではない。 「誰も泣かない明日。」 ただ、それだけだった。 しかし、戦はその願いを許さなかった。 橋は炎に包まれ、 少女は多くの命を救うため、最後まで村に残った。 青年が駆けつけた時には、 橋も、少女も、もうなかった。 青年は剣を捨てた。 守るために手にした剣が、 誰かを守れなかったことを知ったから。 彼は旅に出る。 名も持たず、 地位も求めず、 ただ一人の若き僧侶として。 飢えた者には食を分け、 争う者には耳を傾け、 泣く子どもには笑顔を教えた。 人々は彼の名を知らない。
Comments are disabled on this song
