
Step by Step! (v5.5) 【新・異世界で始める二人旅08】
🐧旧シリーズのOriginal versionはこちら✨ https://suno.com/s/lTts4CKisFDu4ly7 [Intro] 明日へとかざされた空 涙の跡をふきはらいいこう [Verse 1] 世界の果て 地図のない道 印を探す旅の行く先 孤独な道を歩くときも 空白の中声を出そう [Pre-Chorus] 閉ざされた扉の向こう 鼓動の鍵が開いてく [Chorus] Step by Step! 踏み出して ひとりじゃない We'll find the way 希望の歌が僕らを包む Step by Step! 先へ行こう 迷いさえも We'll make it true 共に描く僕らの夢へ [Verse 2] 揺らぐ想い影を落とす それでも空へ伸びる夢 恐れを捨てる勇気を出して まだ見ぬ世界越えて行け [Pre-Chorus] 途方に暮れている世の中 つないだ手が道しるべ [Chorus] Step by Step! 届けたい ときめくまま We'll chase the light 冷たく刺さる風の中で Step by Step! つないで行こう 運命さえも We'll break the fate 共にいるさどんなときも [Bridge] 答えのない旅の行く先 信じる想いひとつなら 未来はきっと変わってく [Chorus] Step by Step! 踏み出して ひとりじゃない We'll find the way 希望の歌が僕らを包む Step by Step! 先へ行こう 迷いさえも We'll make it true 共に描く僕らの夢へ [Outro] Step by Step! このままで 明日を目指して進めばいい [End] 【Episode Story】 【第8話・Step by Step!】 翌朝。朝日が街の屋根を照らし始める頃、主人公と巫女は街の門の前に立っていた。主人公は背中の荷物を背負い直し、振り返る。この世界へ来てから、何度も歩いた街並み。行く宛もなく、今日を生きるために薬草を採っていた場所。けれど今日は、少しだけ違って見えた。 「準備はよろしいですか?」 巫女が柔らかく微笑む。 「はい。たぶん。」 「たぶん、ですか?」 「こういう旅は初めてなので。忘れ物があっても、何を忘れたのか分からない気がして。」 巫女は少し考えてから笑った。 「その時は、その時です。」 「意外と頼もしいですね。」 「旅では、思い通りにならないことも多いですから。」 「なるほど……。じゃあ、行きましょう。」 「はい。」 二人は街の門を抜けた。街道の両側には、朝露をまとった草原がどこまでも広がっていた。柔らかな風が吹くたび、緑の草が波のように揺れていく。遠くには青い山々。白い雲がゆっくり流れ、その下を小さな鳥の群れが横切っていった。街の喧騒も、歩くほど少しずつ遠ざかっていく。主人公は思わず足を止めた。 「……広いな。」 少し先を歩いていた巫女が振り返る。 「この辺りは、まだ歩きやすい方ですよ。」 「まだ?」 「この先には山道もありますので。」 主人公は遠くの山を見る。 「……結構ありそうですね。」 巫女は少しだけ楽しそうに笑った。 「ふふっ。では、もう少し後でお伝えしますね。」 「がんばります……。」 再び二人は歩き出した。最初は少し会話が途切れるたびに気まずさもあったが、不思議と嫌な沈黙ではなかった。草を揺らす風の音や、遠くで鳴く鳥の声を聞きながら、二人は同じ速さで歩いていく。 しばらくして、街道の脇で荷車を押している旅人が見えた。ぬかるみに車輪を取られていたが、男が力を込めた瞬間、体がわずかに光り、荷車が動き出す。主人公が目を丸くした。 「今のって……スキルですか?」 「はい。おそらく、力を少し補助する類のスキルだと思います。」 「そういうスキルもあるんですね。」 「むしろ、ああいったものの方が一般的です。」 「一般的……。」 主人公は自分の手を見る。巫女はその様子に気付き、少し笑う。 「やはり、あなたの『Overtake』はかなり特殊だと思います。」 「やっぱりそうなんですね。」 「はい。スキルは、その人が得意なことを少し助けてくれる程度のものが多いです。少し足が速くなる。短い間だけ身体が丈夫になる。調合が成功しやすくなる。遠くのものが少し見やすくなる……そのくらいですね。」 「えっ!?それに比べると、『Overtake』はだいぶ違いますね…。」 「私も、相手のステータスをコピーするといった似たスキルは聞いたことがありません。」 「自分のものなのに、分からないことばかりだな……。」 「一つずつ確かめていきましょう。」 巫女の言葉に、主人公は少し安心したように笑った。 「そういえば、あなたにもスキルがあるんですか?」 「はい。《詠唱補助》というスキルです。」 「詠唱補助?」 「魔法を使う時の集中を助けるスキルです。使い慣れた魔法ほど、詠唱を短くしやすくなります。」 主人公はグラウガとの戦いを思い返した。 「だから、あんなにすぐ魔法を使えていたんですね。」 「はい。ただ、短縮できる長さは習熟度にかなり左右されます。」 「じゃあ、練習した魔法ほど早く使える?」 「そうですね。簡単な魔法でしたら、かなり練習しましたので。」 「かなり?」 巫女は少しだけ視線を逸らす。 「……かなり、です。」 主人公は思わず笑った。 「それじゃあ強い魔法も?」 「いいえ。強力な魔法や、使い慣れていない魔法には十分な詠唱が必要です。私のスキルも、あくまで補助ですから。」 「なるほど。スキルが魔法を使わせてくれるわけじゃないんですね。」 「はい。魔法を使うには、あくまで本人の魔力が必要です。」 「そっかぁ。魔法がすごいのは、ちゃんと練習してきたからなんですね。」 巫女は少し照れたように笑った。 「そう言っていただけると、嬉しいです。」 主人公は少し考えてから、自分を指さした。 「じゃあ、魔力がまったくない僕は……。」 「残念ですが、普通の方法では魔法を使えないと思います。」 「やっぱりそうですよね……。」 巫女は少し申し訳なさそうな顔をする。 「ですが、あなたには『Overtake』がありますから。」 「その『Overtake』も魔力だけは同期できないんですよね。」 「そうですね……。不思議です。」 主人公は小さく息を吐いた。 「魔法、ちょっと使ってみたかったんですけどね。」 巫女が少しだけ笑う。 「そうなんですか?」 「やっぱり憧れますよ。異世界に来たら魔法って。」 「そういうものなのですか?」 「僕の世界にはありませんでしたから。」 巫女は少し驚いたように主人公を見る。 「魔法もないのですか?」 「ないですね。」 「魔物もいなくて、魔法もない……。」 巫女は少し考える。 「ずいぶん穏やかな世界なのですね。」 「……そう言われると、そんな気がしてきました。」 しばらく歩くと、道が二つに分かれていた。古びた案内板には、この先の町までの距離が記されている。主人公が何気なく読む。 「次の分かれ道まで三時間……結構ありますね。」 「そうですね。」 数歩進んで、主人公が突然止まった。 「……あ?」 「どうされました?」 主人公は案内板を指さす。 「僕、今これ読めましたよね?」 巫女も案内板を見る。 「……読めていましたね。」 「僕、異世界から来たのに。」 「……。」 二人は顔を見合わせた。主人公が苦笑する。 「そういえば、ずっと普通に話せてますよね。」 「今まで、普通に会話もされていましたね。」 「たしかに……。ギルドの受付の時も、ずっと不思議だったんです。なんで知らない文字も読めて、言葉も通じるんだろうって。」 巫女は少し考え込む。 「もしかしたら……。」 「何か思い当たります?」 「『Overtake』が関係しているのかもしれません。」 「言葉も?」 「近くにいた誰かの言語能力を、無意識に取り込んでいた……という可能性はないでしょうか。」 主人公は首を傾げる。 「でも、この世界に来た直後から言葉は分かっていたような気がします。」 「では、その時すでに何かを対象にしていた……?」 「うーん、そんな表示は見てないなぁ。」 巫女は少し困ったように微笑む。 「戦闘以外でも、私たちの知らない形で働いているのでしょうか。」 「……また謎が増えましたね。」 「本当に、不思議なスキルですね。」 「ほんと、僕もそう思います。」 その時だった。 ガサッ。 少し離れた草むらが大きく揺れた。二人が同時に振り向く。 「……今の、風じゃないですよね。」 「はい。気を付けてください。」 草をかき分け、巨大な猪のような魔物が飛び出してきた。太い牙。赤茶色の硬い毛皮。地面を前脚で掻きながら、二人を睨みつける。巫女が杖を構える。 「ラッシュボアです!突進に気を付けてください!」 「分かりました!」 魔物が地面を蹴った。主人公は慌てて横へ飛ぶ。巨体がすぐそばを駆け抜け、土が弾ける。剣を抜き、距離を詰める。視界に文字が浮かぶ。 ユニークスキルを発動します スキル「Overtake」 対象:ラッシュボア 同期開始… 「始まった……!」 だが、同期が終わるまでには時間がかかる。ラッシュボアが向きを変え、再び主人公へ突進する。 「私が援護します!」 巫女が杖を向ける。 「アイスショット!」 短い詠唱とともに氷の弾が飛び、魔物の顔の前で弾ける。突進の軌道がわずかに逸れ、主人公は牙をかわした。 「助かりました!」 「まだ来ます!」 三度目の突進。今度は巫女が地面へ杖を向ける。 「アイスバインド!」 氷がラッシュボアの前脚へ絡みつき、動きが鈍る。完全には止まらない。それでも十分だった。 ユニークスキルを発動します スキル「Overtake」 対象:ラッシュボア 同期能力 ・戦闘力 同期 +ADD ・防御力 同期 +ADD ・敏捷力 同期 +ADD ・魔力 同期不可 同期完了 「来た!」 身体の感覚が変わる。魔物の踏み込み。重心。突進する直前の動き。先ほどまで必死に避けていた攻撃が、見える!ラッシュボアが氷を砕き、突進する。主人公は寸前まで引きつけ、横へかわした。すれ違いざまに横腹へ剣を走らせる! 「グオオッ!」 魔物が大きくよろめく。主人公は追いかけず、巫女を見る。 「今です!」 巫女はすでに杖を構えていた。 「アイスランス!」 鋭い氷の槍が放たれ、主人公が斬った傷へ突き刺さる。ラッシュボアは数歩よろめき、そのまま草原へ倒れた。しばらく二人は警戒していたが、やがて巫女が杖を下ろす。 「もう大丈夫です。」 主人公も剣を下ろし、大きく息を吐いた。 「あれ……前回に比べると、かなり楽でしたね。」 巫女は少し考えてから答える。 「前回の魔物を基準にするのは、あまりしないほうがいいかもしれませんね。」 「ですよね。」 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。 ――その夜。 二人は街道から少し離れた草原で野営することにした。昼間は青々としていた草原も、今は月明かりに淡く照らされている。遠くには黒い山の影。頭上には数え切れないほどの星が広がっていた。小さな焚き火が、ぱちぱちと音を立てている。主人公は巫女に教わりながら薪を並べた。 「薪はこれくらいで大丈夫ですか?」 「はい。それくらいで十分です。」 主人公は抱えていた薪を見る。 「結構余りましたね。」 「全部入れてしまうと、すぐに燃え尽きてしまいますから。」 「なるほど……。野宿って考えることが多いですね。」 「旅は初めてでしたね。」 「会社員に野宿の経験はあまりないですから。」 巫女が首を傾げる。 「かいしゃいん……?」 「あ、元の世界の仕事です。」 「大変なお仕事だったのですか?」 主人公は少し考える。 「まあ、別の意味で大変なことはありましたけど。」 「ふふ、そうなのですか?」 「はは。でも、今思えば平和だったんだなって思います。」 主人公は少しだけ笑う。巫女もつられるように微笑んだ。簡単な食事を終え、二人は焚き火を挟んで座っていた。炎の向こうで巫女が温かい飲み物を口にする。虫の声。遠くを渡る風。時折、火の粉が夜空へ舞い上がる。しばらく、どちらも何も話さなかった。主人公が空を見上げる。 「……静かですね。」 「はい。」 それだけだった。けれど、不思議と気まずくはなかった。やがて巫女が荷物から地図を取り出し、焚き火のそばへ広げる。 「次の目的地を確認しておきましょう。」 主人公が隣から地図を覗き込む。巫女の指が、《アルカ》のあった国から離れた地域を示した。 「まずは、この辺りを目指します。」 「次の印がそこに?」 巫女は少し申し訳なさそうに笑う。 「……でしたら、よかったのですが。」 主人公も笑う。 「やっぱり、詳しい場所までは分からないんですね。」 「はい。記録に残っているのは、この地域にあるということだけです。」 「じゃあ、着いたら聞き込みですか。」 「はい。古い伝承や遺跡について、ご存じの方を探してみましょう。」 「簡単には見つからなさそうですね。」 「そうですね。」 焚き火を見つめながら、巫女が静かに続ける。 「でも、焦っても仕方ありません。一つずつ探していきましょう。」 主人公も炎を見つめる。 「……一歩ずつ、ですね。」 巫女は柔らかく微笑んだ。 「はい。一歩ずつです。」 主人公は草の上へ横になり、満天の星を見上げた。帰る方法も、印の場所も、『Overtake』の正体も、まだ分からない。不安が消えたわけでもない。それでも。焚き火の向こうには、同じ道を歩く仲間がいる。昨日までとは、違う。風が草原を渡り、焚き火の炎を優しく揺らす。まだ知らない世界へ続く旅は、始まったばかりだった――。


