
𝔸𝕀𝕌【𝔸udible 𝕀dol 𝕌niverse】 音楽プロジェクト"𝙇𝙄𝙉-𝙜𝙞𝙧𝙡 𝙉𝙐𝙈𝘽𝙀𝙍𝙎"が描く一大叙事詩 𝔸𝕀𝕌 # 5 - 6 https://suno.com/playlist/4e179df0-d129-4cf5-ba7a-fe8229949d05 [総集編] 3分でわかる 𝔸𝕀𝕌 https://suno.com/playlist/b46c3510-4f2f-49ad-8833-d42157db6a56 ↶⇃↧↡↓⇣⇟⇓⇊ 🆂🆃🅾🆁🆈 is below ⇊⇓⇟⇣↓↡↧⇂↷ ─────────────────────────────────── 6️⃣ Siↄ|‹!S (⑥~⑥) [dark cabaret, futuristic soundscapes, space opera] 🅿🅻🅰🆈🅻🅸🆂🆃 https://suno.com/playlist/3f45232d-8fb9-483f-872c-3cac9d06f1da 「 詩 とは 言 の 病 なり」(Poem=Logos+Siↄ|‹!S) 6️⃣ 詩篇『パピヨンの伝説』 ʚ(⑥'’⑥)ɞ 「血に囁く、五十の姫/宝石函の少女/虫愛づる姫君。」 ─────────────────────────────────── 🅻🆈🆁🅸🅲 適当に作った世界だから適当に滅べばいい と 亡者の寝言を聞いた。 朝―――。 薄荷の列なる小径を上り往く驢馬と御者、老害の風に布を旗めかせる。 驢馬は暴れない。黒く巨きな犬が門前で口を開けていても、頭を垂れたまま進み続ける。 外反母趾の蹄を引き摺り、重荷をよいせと担ぎ直す。口笛に魔が差す。 幻惑な花の香りだけが飄々としている砂地の公園で子どもたちは待つ。 驢馬は笑わない。家畜にも解る道化の可笑しみに満ちていても、そそくさと陰に引込む。 地に振動。砂埃舞う。粉塵が血迷った猩々蠅となり宙返り、これも白内障の見せる幻か。 昼―――。 昨夜の深酒のせいで午前から逆上せた郵便配達夫が道端で胡坐をかく。 傍らには毀れた自転車。借り物である。借り物であり、安月給を続ける為の担保である。 煙草を持つほど豊かではなく、そこいらの草を千切り銜えて誤魔化す。 水妖が浸透しているかのような空に、模倣の地図を描いた白絹の鱗雲。 どうしたものかと巡らす内に、脳裏で描いたとおり山脈の向こうから、鋼色の蝶の群れ。 空に波動。雲が遁走。気化した汗さえ痺れるほどの亀裂の気配。宿酔のせいに違いない。 夜―――。 蒸着したのは名も知れぬ金、装飾鏤めた加工布で裸体を秘して踊る女。 模造宝石には男衆の精子を封じ込め、与える餌は楽屋裏、もしくは賭場での紙幣の紙屑。 肌蹴、腰を捻り、裾を引き上げ、冒険者を誘う罠の宝殿を演じる、オンナ。 顕わになった肩甲骨の下、翻った蝶の入墨に触れた良人はとうに海の底。 悲しみは口紅を重ね塗りして悦びに換え、抱き寄せた熊の縫い包みには、懐かしい匂い。 目蓋を開けば電飾の鬩ぎ合う舞台上、肩が羽ばたいた瞬間に、ネオンが騒ぐ、街に機動音。 墓石のパズルを解き、続く荒野を渡り、さらに荒涼とした跡地を訪れた詩人。 黒々と焦燥の徒が転がる街角で、野良犬の骨が風に攫われる瞬間を見る。 言付けを信じて削いだ鼻だが、視野を侵し、腐臭が鼻腔を突き破る。 市街地は静電気を帯びたか、口許を覆う手首が醜く異常な震え。 詩人の脳が恐怖を帯びる、胸糞悪い僅かに笑いに似た恐怖。 広場の壁には行儀の悪い抽象画。黒鉛に見紛う絵の具は錆の浮いた血痕である。 麻薬を嗜む花弁のような、魔術に屈した雄牛のような。 歪んだ輪郭に夢魔の俤を見、置物となり息を呑む、朴詩人。 妄想は落書きにことばを覚え、居もしない画家の声、耳を啄む。 悪魔来りて悪魔来りて、安直な、馴染みある地獄の声援に胸を病む。 解いたかと思ったパズルはなんてこともない未完成のパズル。寄り道をした。 驢馬は兵士となり、金貨を愛でて成金と化した。数世代の間には苦難があった。 配達夫は釣鐘草となり、狭められた区画の端で石と雑草に埋もれて咲いている。 女は噛み砕かれて城壁の頂上で揺らめく軍旗となり、銃砲の謡曲を聴いている。 身支度を整える詩人の背中を瞠るのは、戦火が画才を創った、抽象画家の幽霊。 詩人の眼には勇壮さが宿っていない。ぶくぶくと肥えた鉄の塊が降った刹那の。 街道を灼きつくした紅蓮と相似、藝術の火。行くがいいさ、灰色の懐嚢の中へ。 幽霊の消失も知らず、詩人は幾つもの街を通り過ぎる。西へ、西へと突き進む。 荒廃したどの街にも探しているものは見当たらず、ただ悲壮が付き纏うばかり。 浮遊する魂が詩人に古い詩を唱えさせる。――途轍もない悲しみが衣服を破り。 詩人は知らなかった。 花時計の迷路を抜け出せずにいた孤独の蝶を一度、掌で捕らえたのは彼である。 詩作も恋も、恐怖も知らぬあどけない少年の頃の彼こそ、蝶の救い主であった。 故に海岸に出た蝶が帝国へ辿り着き、指揮官の夢枕に妙薬を振り撒いたことも。 指揮の元、詩人と二、三も違わぬ軍曹が、操縦士に離陸の合図を示したことも。 操縦士の指先ひとつで蓋が開閉し、愈々、市街地上空で投下が為されたことも。 弾頭は宙で翅を広げ優雅に空を舞ったこと、地上の民の頬が緩んでいたことも、 知らない詩人は野宿をしながら、幼いときに読み聴かせられた詩を朗読する。 反芻する。 堪能する。 妄想が濃紫の翅を広げ、詩人の脳裏を旋回したとき、世界は寒気に嘔吐した。 詩に恋をし、ことばに恋をし、蝶に恋した詩人は、その恋を三人の娘に描き、 愛撫する。 性交する。 鱗粉に鼻の粘膜を刺激され、ひとつ嚔をする、詩人という名の、ただのひと。 鉄が降る、 夢をみる。 亡者の寝言はト書の類……と囈語を唱う詩人の頬は、稚く緩む。蝶のように。 ─────────────────────────────────── 🆂🆃🅾🆁🆈 第5章 『𝐃𝐢𝐬𝐚𝐩𝐩𝐞𝐚𝐫𝐞𝐝!』 vol.16 〚やあ、WONDER・Sの諸君。ようこそ……ほんとうの"Musée d'Août"へ。〛 少女らはなにも答えなかった。 軽く咳払いをして、立ち上がる。着座のままがよくなかったのだろう。 風が帽子を飛ばそうとするから、よろめきながら椅子の傍らに立ち、私は私なりに丁寧に、それでいて、気障?……いやいや、気丈にふるまって挨拶をしてみせる。 〚もう一度言うね。やあ、WONDER・Sの諸君。ようこそ……ほんとうの〛 「透明人間?」 髪をうしろでひとつに束ねている少女だ。少し、おしゃべりな子。 名前は知っているぞ。ツ……(なんだっけな)……ツクシだ。 そうだ。あの草むらにツンと映えている、まあるい頭のぶっきらぼう。 変に襟を立てて、裾も立てて、まるで踊りたくもないのに舞台に上がってきて、教科書通りのステップを踏んで引っ込んでいく、そんな……(まぁ、それはいいか) 〚今、私が、挨拶をしようとしていたんだ。ね、……ほんとうの〛 「お化け?幽霊?」 「いやいや」 「ねぇ、私にしか見えてないってことある?」 「服は見えてるよね」 お、落ち着いた助け舟。凛とした佇まい。彼女が走っている姿を見かけたことがあるが、まずもって姿勢がいい。私には彼女の鼻筋からうなじにかけて逆巻く、小さな螺貝のような風のこどもたちが、かくも楽しそうに見えて仕方なかったよ。 肩から流れ込んでいく風は、絹の羽をもつ鳳が撫でるように転がっていた。ああ、走り方で風の軟らかさが変わる。彼女の風は指先でおしつぶしてしまうほどに軟らかく、そして、ほろ苦い。 彼女は、カオリだ。少しだけ緊張感があって、奥深さと繊細さのある名前。 「ショット!……心霊写真……なのかなーこれ?」 やい、その目許を塞いでいる硝子は何も真実を写さないらしいな。 いや、映しているのか。ふん、確かに私は彼女たちには見えない。 服だってね、見えなくすることだって出来るんだよ。 でも、それではほんとうに私がどこにいるか分からなくなってしまうから。 物が見える理屈というのものは、しょせん光のまやかし、悪戯、お節介のたぐい。 屈折、反射などとややこしくて敵わない。 彼女がつけている眼鏡も、覗き込んでいるキャメラも、そんな光に惑わされているから、なにも感じられなくなるのだよ。名前は、シズク。ああ、まやかしの最たる名前。とはいえ、私は水滴や油膜のあの虹色がたまらなく好きなんだけどね。 「なんか……ぶつぶつ……言ってない?」 あ、少し悪意があるな。私の独り言は、それだけで詩篇でもある。 その詩篇をまるで雑音のように語る。 この少女は、……クルミ。カラカラ鳴って耳障りなのはそちらの方だろう。ましてや、この少女の声はキンキンして耳に来る。通り越して、目に来る。え、どちらも存在するのかって? 見えないから存在しないというのは、ちっぽけな考えだな。……我ながら。 だって、私には見えてもいるし聞こえてもいる。目は見るためのもの、耳は聞くためのものであって、結果が伴っているのだから、見えたり見えないなんてどうでもいいのだ。えっへん。 「私、……このひと、知ってる」 出たな。 総大将。 もとはと言えば、この少女が発端だ。すべての物事にはきっかけというものがあって、私が思うにそのきっかけは、思い付きのようにぽっと出たりする。まるで、暗がりで灯したマッチのように。ぼんやりとそのきっかけは広がって、闇を闇でなくする。 分かるかい?君が灯したマッチは、まだ燃えているんだ。そして、私のところにまで火の気は伝わってきた。いまは、どういう気分だね、 〚どういう気分だね、アカリ。〛 五人ともほんの少し後退った。そんなに警戒することはないのにな。 「この服、アカリの名前知ってるの?」 「どこかで見てるのかな。マイク仕込んで、遠くで見てるんでしょ」 「ていうか、お互い知ってるって。どういう関係?」 「男のひと、女のひと?声だけじゃちょっと分かりづらい声してるよね」 もう、そうやって多方向からいっぺんに喋らないでもらいたい。誰が誰だか分からないじゃないか。名前を付さなきゃ誰だか分からないなんて、少女たちはまるで透明人間のようだね。 ああ、そうだ。これは皮肉だ。私の内心の。 〚そうかそうか。失礼。私の名前を名乗っていなかったね。名乗るということはとても大切なことだ。名前が存在を象る。名前が存在を伝えあう。名前が存在を残す。そんな初歩的なことを私はすっかり忘れてしまっていたようだ。失礼失礼。…… ……名前といえば、私が他人の名前を覚えるとき〛 「で、あなたの名前は?」 またも遮られた。今度はアカリだ。ん、少し苛々しているのか? この"Musée d'Août"の侵入した者の分際で。あちらの"Musée d'Août"も、こちらの"Musée d'Août"も鍵をかけていなかったからといって、勝手に庭に歩み入り、勝手に私の休息を邪魔し、勝手に私の……まぁ、だが、鍵をかけなかった私にも非がある。 〚私の名前が知りたいかね。この私の。〛 「大切なことって言ってたのはどっち?……ねぇ、あれ、なんか私、ちょっと苛々して来たんだけど」 〚ツクシ殿。君が苛々するのかい。〛 「……と、殿?」 〚閣下がよかったかね。苛立ちは、たいてい魂の位の低い者の癖だ。だから諂ってやった。どうだね、気分は。〛 「よ、よくはないです」 〚だろうな。私もだ。冗談はこの辺にしておこう。私の名前なんてはっきりいってなんの価値もないのだが、いいだろう、教えよう。私の名前は……《詩人》、だ。〛 別に受けを狙ったわけではないが、反応がないのは少し困る。伝わってない気になるからだ。私は回答を待っているわけではない。ただ、私が名乗って、名乗ったという事実を受け取った証拠を提示してほしい。それぐらいできるだろうに。気遣いがないから、私の名前も、私自身も宙に浮いてしまう。 「それが名前?」 〚アカリ殿。いかにも。それが、名前。〛 「あ、殿つけた」 〚いつもつけるわけではない。つけたいわけでもない。〛 「じゃあ、なんでつけたの?」 〚つけたつもりもない。〛 「うわぁ、ことばが通じないひとだ」 〚カオリ。君はなんだって、はっきり言うな。嫌いじゃない。〛 「え、あ、ありがとうございます」 〚それで、誰か詩人って名前じゃなくて職業じゃないのか、って指摘はしてくれないのかい。〛 「詩人って職業なのかな」 「肩書き?」 「言ったもの勝ちみたいなところあるけど」 〚ほんとうに君たちは不躾を口で飼ってるような少女たちだね。詩人をなんと心得る。〛 「なんと、って言われても……なんだろう。……これ、教えてくれないパターンじゃない?」 「思いついてないパターンかも」 「あ、それだ」 〚詩人とは、……魔法使いだ。〛 「職業に職業を乗せてきたよ」 「じゃあ、アカリも魔法使い?」 「いやいや」 「アカリ、全国のコンクールで金賞とったんだよ。詩の。それも二年連続」 〚なんと。詩心に恵まれた者だ。だが、たかだか学生風情がルーズリーフに書くようなものと私の切実なることばの〛 「ねぇ、《詩人》さん」 〚クルミ殿。君の声は最もよく届く。だからせめて、私のことばが途絶えるときを待ってくれてもよかろうに。何用だ。〛 「ここはどこなんですか。ことばに達者なのは分かったので、この凡人たちに分かるように教えてください」 〚ふむ。尋ね方は心得ているようだね。決して私は君たちが凡人だとそんな不遜な風に思ってはいないのだが、まぁ、いいだろう。ここ、というのが、この丘のことなのか、この世界のことなのか、その質問の意図にもよるが、順に教えよう。まずは、この丘。この丘に名前はない。〛 「丘は、どうでもいいかな」 「だが、この椅子には名前がある。"Musée d'Août"」 「それって、椅子の名前だったんだ。《詩人》さんの名前かと思った」 「ムッシュー・ダユー」 〚そんな、ムッシュだか太夫だか分からない名前が私の名前なわけないだろう。"Musée d'Août" 。その意味は、"八月の博物館"。私がここに座って世界を眺めるとき、目の前にありとあらゆるものが見渡せる。つまり、世界に存在するすべてのものが博物館に並ぶ展示品の数々だ。それそのものに記憶があるだけではない。観測、という行為自体にも思い出が宿る。さながらあの夏の日、人のごった返すなか、訪れた"八月の博物館"のように。〛 「それは、《詩人》さんの思い出?」 〚……さぁ、それはどうだろうな。そして、もうひとつ、あそこに建っているのが……〛 「うわぁ、袖がひとりでに持ち上がった」 〚指を差しているのだ。後ろを見たまえ。〛 「なんか、ちょっと趣きあるというか、なんか外国の古い映画に出てきそうな」 〚なんて陳腐な形容だ、凡人め。……おっと、言いすぎた。あの建物はキャバレーだ。その名も、"CLUB FAUST"。〛 「キャバレーって、……お酒飲んだり、踊り子さんとかがいる?」 〚まぁ、多少踊ることもあろうが、主役は歌だ。〛 「歌……《詩人》さんが歌うの?」 〚まさか。私は詩作専門だ。君たちも見ただろう。机のうえに乗っていた、大変ありがたい才能迸る、まさにアイデンティティとオリジナリティの詰まった習作詩篇の数々……〛 「才能迸るって、自分で言ってるよ」 「あの日記帳は、《詩人》さんのだったんだ」 〚いかにも。詩作ノートと呼んでは味気ない。この私が、日々、この目と、この耳と、この鼻と、この脳髄でもって拵えた、日毎の幻視の結果であり、ことばの宝物庫。それこそがあのDIARY。君たちは視たか。類稀なる言語芸術の精髄を!〛 「……自画自賛、すごいなー」 「見たって言っても一瞬だったから……」 〚なんと、残念至極、まるで地獄の一丁目だ、ちきしょうめ。〛 「急に韻踏み始めた」 〚言語魔術は時と場所を選ばないのだ。頃合いも他人の都合も読まない。〛 「……自分勝手、すごいなー」 「それで、どうして私たちをこの世界に?《詩人》さんが仕向けたんでしょ?」 〚仕向けた?まるで宿命をちっぽけな策略のように語るな。アカリ殿。だが、いいだろう。今この時という頃合いが最適ならば教えてやろうじゃないか。〛 「頃合いは選ばないんじゃなかったっけ?」 〚なに、私の話ではないよ。……君たちの話だ。君たちの……"罪"の、ね。〛 "罪"……誰もが心中で戸惑っていることだろう。何気ないやり取りが、奇跡とも糾弾ともなりかねない。それこそ"言語魔術"の一端でもある。 〚君たちが匿っていた蝶……あれは、私のよき友人であり、いや、それ以上……言うなればかけがえのない"娘"だ。〛 先ほどまで矢継ぎ早に反応を見せていた少女たちが急に口をつぐみだした。無駄に怯えることもなかろうに。私はただ、事実を述べたまでだ。そして、私の思惑にはまだ辿り着いていない。 もう少し、人の悪いところを見せようか。 〚あちらの世界では君たちは私を認識できない。わざわざここへ呼んだのは、君らに直接問いたかったからだ。〛 少女たちの視線が私に注がれる。 〚君たちに問いたい。……どうして、〛 悪く思うな、WONDER・S。 君らがしたことを、言葉として残そう。 〚……どうして、 蝶を閉じ込めた?〛

