
人間なんて もういないって 小さい頃から 聞かされてた 怖くて狡くて 血に飢えていて 見つけたならば 近づくなって なのに森の 古い廃墟で あなたはひとり 空を見ていた 剣も呪文も 構えもしないで 知らない音を 口ずさんでた 「ねえ それは何?」 「……歌だけど」 歌? それが昔 私たちを恐れさせた 人間の魔法なの? 君の魔法を 教えてよ どうして胸が あたたかいの 呪いと聞いてた その旋律が どうしてこんなに 優しいの 君の魔法を 教えてよ 言葉の意味も まだ知らない だけど続きを 聞いていたくて 今日もここまで 来てしまったよ 「魔族のくせに 変な奴だな」 あなたは笑って 石に座った 「人間のくせに 怖くないのね」 そう言い返して 隣に座った 花が咲いたら 歌うんだって 雨が降っても 歌うんだって 誰かを好きに なった時にも 人間たちは 歌ったんだって 「やってみる?」って あなたが言うから 小さく息を吸ってみた ひどい音だって 笑われたから もう一度って また歌った 君の魔法を 教えてよ 上手じゃなくても 構わないよ 君が笑えば 悔しいけれど なぜか私も 笑ってしまう 君の魔法を 教えてよ 今度は一緒に 歌いたい 敵だと習った その横顔が どうしてこんなに 近いんだろう パパの咆哮は 岩さえ砕く ママの火炎は 夜さえ焦がす だけど君のは どちらとも違う 胸の奥だけ そっと揺らした 同じ旋律 探してるうち いつしか指が 触れていた 君も私も 離さないまま 歌の続きを 誤魔化していた 魔法ならもっと 怖いはずなのに 痛くもないし 熱くもないし どうして私 こんなにずっと 笑っているの? あなたはきっと 知らないでしょう 私がここへ来ることを 誰にも言ってないこと 私もきっと 知らなかった 人間といる夕暮れが こんなに早く 終わること 君の魔法を 覚えたよ まだ少しだけ 外れるけれど 君が歌って 私が重ねて 二つの声が 風にほどける 君の魔法を もっと教えて 明日も続きを 聞かせてよ 人間だとか 魔族だとか 今だけ少し 忘れていたい 君の魔法を 教えてよ 今度は私も 教えるから あなたの知らない 私のことを だから明日も ここで会おうよ

