
永久微睡は背徳的で甘美な蜜の味
発条が伸びきった 均質な絶望 液晶の放つ箱が 絶対領域とする 私はただ 無感情の肉塊となり 意味の剥がれ落ちた 天井を見つめている 朝の光が 遮光の隙間を刺すけれど 不均衡の世界を 生かす火ではない シーツの皺は 矛盾の地図を執拗に描き 重力に逆らう正義を 静かに削ぎ落とす 世界が営む 正常という名の歯車 その軋む音が 遠い窓の外で響いている スマートフォンの通知は 生者の叫びのようで 私は冷えた指先で その息の根を止める あぁ 贅沢に腐っていく この実存よ 言葉を失くしたまま 気怠さに溺れていく 生産性という名の神を 窓から放逐し 私はこの部屋の 無冠の女王となる ぬるくなった炭酸が 抜けてゆくように 私の輪郭もまた 少しずつ曖昧になる 意味のない動画の 明滅を網膜に流し 思考の終わりを ただただ希釈している 明日の私が どのような罰を受けようとも 今の私は この微睡みの檻で満ち足りている 「頑張る」という欺瞞の傑作を 脳から抹消して ただ呼吸という 無機質な運動を繰り返す あぁ 優雅に堕落していく この肉体よ 薄明(はくめい)の部屋は 私のために用意された棺 社会の理(ことわり)を拒み 倫理の糸を解いて 愛しい虚無のなかへ 深く沈んでゆく 時間は無情に 私の実存を削り取る 世界は私を置いて 正しく回転を続ける だけど私は この揺り籠から動かない 動かないことが 私に残された唯一の抵抗 あぁ 贅沢に腐っていこう 最後まで 昇りつめる私を この夜が祝福している 明けない夜を演じる 電子の迷宮のなかで 完璧な密約という 芸術を完成させる 微熱を帯びたシンセが 意識の端で融けてゆく La La La... 言葉は記号へと還る 静寂が私を 完全に包み込むまで 蜜の味の海で 私を逝かせて


