【序】 空虚な朝に 天色の窓 昨日の言葉を まだ 耳に飼っている 誰の声だったか 思い出せない 【一節】 君が好きだと言った歌 知らない旋律が 知らない街を連れてくる 角を曲がれば 昨日まで無かった色 世界が変わったのか 私が変わったのか 【二節】 水縹の午後 笑い声ひとつで 長かった道が近くなる 名前を呼ばれて 振り向いた先に 私の知らない 私がいた 【橋渡し】 空白に 風が通る 空いた場所ほど よく声が響く 忘れたはずの言葉が 別の誰かの口から また 私を歩かせる 【三節】 青藍の夜 別れた人の癖が ふいに手元へ戻ってくる 消えたものほど 消えきらない 胸の奥で 静かに場所を変えている 【サビ】 紺碧の彼方 まだ名のない色 届かないものまで 今日の景色にする 空虚だった胸に ひとつ ひとつ 誰かの温度が 残っている 空白は いつしか空間になる 【四節】 群青の底で ひとりの星を見つけた ひとつでは 夜は明けない それでも星を知れば 夜の深さが変わる 人はきっと そんなふうに残る 【間奏】 空いた手 空いた席 空いた言葉 そのどれにも まだ 余白がある 【落ちサビ】 天色だった憧れが 水縹の記憶になり 水縹だった記憶が 青藍の深さになった 青藍の夜を越えて 紺碧を抱き 群青の中に 私は立っている 色が濃くなるほど 人生は なぜか 温かくなった 【八節】 誰かに貰った世界を 誰かのものにはしない 私の言葉にして 私の歩幅にして いつかまた 誰かへ渡してゆく 君がくれた景色も あなたが残した癖も 知らない誰かの明日で 小さな灯になるのなら 人から人へ 渡ってゆくものを 私は「生きた」と 呼びたい 【大サビ】 霄 遠いから 見ていたい 届かないから 歩いていたい 失ったものも 残ったものも この胸で 同じ空間になる ひとりだった頃より 少しだけ 世界の端が 遠くなった 【終奏】 空は 空ではなかった 空白の向こうに 誰かがいた その人の向こうに また誰かがいる 群青は ひとりの青ではない だから まだ見ぬ色へ 霄へ