
📖 歌詞はサイドストーリーの後に記載しています。 🎧 Japanese lyrics are written after the side story. 🌧️🌌🕯️🗝️ ──────────── 🎬 群青の誓いと白銀の刃 第1話『群青の名前』 第2話『夜に残る足音』はこちら👇 https://suno.com/s/kawtD99h6iLcZlyV 🌧️🌌🕯️🗝️ ──────────── 登場人物: 🌌 ノエリス 名も居場所も失った少女。 古びた布に包まれた細長い荷だけを、どうしても手放せずにいる。 🕯️ オーレリア 名家ヴァルモント家の令嬢。 すべてを救えない現実を知りながらも、目の前の人を見捨てない当主でありたいと願っている。 【サイドストーリー】 第1話「群青の名前」 雨上がりの街は、まだ冷たかった。 石畳には薄く水が残り、夕暮れの空をぼんやりと映している。 名家ヴァルモント家へ続く坂道の下では、仕事を失った者、帰る場所をなくした者、明日の食事さえ分からない者たちが、壁際に身を寄せていた。 この街では、行く当てのない人間など珍しくない。 その中に、ひとりの少女がいた。 古びた外套。 泥のついた靴。 荷物らしい荷物は、腕に抱えた細長い包みだけ。 その包みは、古い布で何重にも巻かれていた。 中身が何なのか、少女自身にもはっきりとは分からない。 名前も。 どこから来たのかも。 どうしてここにいるのかも。 思い出そうとすると、胸の奥が冷たくなる。 けれど、その包みだけは手放してはいけない。 それだけは、本能のように身体が覚えていた。 通りの向こうで、小さな子どもが転んだ。 手に持っていた小さな袋が石畳に落ち、子どもは泣きそうな顔で膝を押さえている。 それだけなら、珍しいことではなかった。 雨上がりの街では、誰もが自分のことで精いっぱいだった。 けれどその直後、坂の上から馬車がゆっくりと下ってきた。 濡れた石畳で、車輪がわずかに滑る。 御者はまだ気づいていない。 子どもは落とした包みに手を伸ばしたまま、馬車の進む先にいた。 誰かが声を上げるより早く、少女が動いた。 走ったのではない。 叫んだのでもない。 ただ一歩、迷いなく間合いを詰めた。 少女は片腕に細長い包みを抱えたまま、もう片方の手をそっと子どもの肩に添えた。 強く引いたわけではない。 驚かせない力で、道の端へ導いただけだった。 馬車は、子どもがいた場所を少し遅れて通り過ぎていった。 【少女】「……大丈夫ですか」 子どもは、何が起きたのか分かっていないようだった。 少女は何も説明しなかった。 自分が助けたとも言わなかった。 ただ、濡れた外套の端で子どもの膝についた泥をそっと払い、落ちた小さな袋を拾って渡した。 【少女】「これ、落としましたよ」 近づきすぎない。 怖がらせない。 恩を着せない。 助けたことさえ、相手の負担にしない。 その一部始終を、馬車の陰から見ていた少女がいた。 名家ヴァルモント家の令嬢、オーレリア。 まだ正式な当主ではない。 けれど、いずれ家を継ぐ者として、人を見ることから逃げない少女だった。 オーレリアは知っていた。 この街には、助けを必要としている人がたくさんいる。 だからこそ、誰か一人にだけ手を差し伸べることが、時に残酷な選択になることも知っていた。 けれど今、目の前の少女は違った。 助けを求める側にいるはずなのに。 自分が一番濡れて、一番震えて、一番居場所を失っているはずなのに。 それでも彼女は、誰よりも早く危険に気づき、誰にも気づかれないように誰かを守った。 オーレリアは、その静かな一歩から目を離せなかった。 【オーレリア】「待って」 呼び止められた少女は、静かに振り返った。 【少女】「……私に、何か」 【オーレリア】「今の、見ていたの」 【少女】「……何もしていません」 【オーレリア】「何もしていない人は、あんなふうに子どもを怖がらせずに道の端へ連れていけない」 少女の指先が、包みの布をわずかに握った。 【オーレリア】「あなた、自分のことだって大変そうなのに」 【少女】「……ただ、危なかったので」 【オーレリア】「危ないと気づいても、動けない人はたくさんいるわ」 オーレリアは少しだけ迷ってから、まっすぐに言った。 【オーレリア】「でもあなたは動いた。しかも、助けたことを相手に気づかせないように」 少女は答えなかった。 【オーレリア】「そういう人を、私は見なかったことにしたくない」 その言葉に、少女は少しだけ目を伏せた。 優しさには慣れていなかった。 差し出された手を信じる方法を、もう忘れていた。 【オーレリア】「行く場所はある?」 【少女】「……ありません」 【オーレリア】「なら、うちへ来てほしいの」 あまりにもまっすぐな言葉だった。 少女は小さく首を振る。 【少女】「この街には、行く場所のない人がたくさんいます」 【オーレリア】「ええ」 【少女】「なら、なおさら私だけを選ぶ理由はありません」 オーレリアは雨上がりの街を見た。 壁際に座る人々。 俯いて歩く人々。 助けを求める声にならない声。 そのすべてを、彼女は見ないふりなどしていなかった。 【オーレリア】「私も、そこから逃げたくない」 オーレリアの声は優しかった。 けれど、その奥には確かな芯があった。 【オーレリア】「全員を屋敷へ招くことはできない。私ひとりの情で、すべてを救えるなんて思っていないわ」 少女は黙って聞いていた。 【オーレリア】「情をかけるだけでは、当主として失格なのかもしれない。そう言う人もいると思う」 オーレリアは少しだけ迷うように息を吸った。 【オーレリア】「でも、目の前にいる人を見捨ててまで守る家なら、私はそんな当主にはなりたくない」 少女の瞳が、わずかに揺れた。 【オーレリア】「だから私は、見たものに責任を持ちたい」 【少女】「見たもの……?」 【オーレリア】「あなたが、誰かを守る人だということ」 その言葉は、雨音よりも静かに、少女の胸へ落ちた。 貧しいからではない。 哀れだからでもない。 この人は、自分の中に残っていた何かを見たのだ。 【少女】「……私は、何者かも分かりません」 【オーレリア】「今ここにいるあなたは、分かる」 【少女】「名前も、うまく思い出せません」 【オーレリア】「無理に思い出さなくていい」 オーレリアの視線が、少女の腕の中の包みに向いた。 【オーレリア】「その包みは?」 少女は反射的に、包みを抱く腕に力を込めた。 怒りではなかった。 拒絶でもなかった。 ただ、守らなければいけないものに触れられそうになった身体が、勝手に動いただけだった。 オーレリアはそれに気づき、一歩近づくのをやめた。 【少女】「……分かりません」 【オーレリア】「分からない?」 【少女】「どこから来たのかも、どうしてこれを持っているのかも、うまく思い出せません。でも、これだけは……手放してはいけない気がするんです」 オーレリアはしばらく黙って、その包みと少女の顔を見比べた。 【オーレリア】「分かった。無理に開けなくていい」 少女の目が、わずかに揺れた。 【オーレリア】「でも、約束して。もしそれが誰かを傷つけるものなら、私はあなたを止める」 少女は、その言葉に小さく息を呑んだ。 止める。 その言葉は、不思議と怖くなかった。 【少女】「……はい」 少しだけ、少女の口元がゆるんだ。 【少女】「その方が、安心します」 オーレリアも、ほっとしたように笑った。 【オーレリア】「じゃあ、来てくれる?」 少女はまだ迷っていた。 それでも、断る理由はもう少しずつほどけ始めていた。 【少女】「……私のような者を屋敷に入れれば、あなたの評判を傷つけます」 【オーレリア】「評判より先に、今ここであなたを見なかったことにする方が、私は嫌」 【少女】「……短い間だけなら」 【オーレリア】「短いなんて言わないで」 オーレリアは少し困ったように、それでも嬉しそうに笑った。 【オーレリア】「長くいてほしい。これは命令じゃなくて、お願い」 その笑顔が、あまりにもあたたかかったから。 少女は、静かに頷いた。 屋敷の門をくぐる頃、雨は完全に上がっていた。 空は青でも黒でもない。 夜になる一歩手前の、深い群青に染まっている。 門灯がひとつ、またひとつと灯り始めた。 オーレリアが、ふと立ち止まる。 【オーレリア】「……屋敷で、あなたをどう呼べばいいかしら」 少女は少しだけ黙った。 【少女】「……分かりません。名前は、忘れてしまったので」 それは嘘ではなかった。 正確には、思い出したくなかった。 オーレリアは驚いた顔をした。 けれど、すぐに何かを察したように表情を和らげる。 【オーレリア】「そっか。じゃあ、無理に思い出さなくていい」 その言い方に、少女は少しだけ救われた。 【オーレリア】「でも、屋敷で呼ぶ名前は必要よね。押しつけたくないから、一緒に考えたいの」 【少女】「……一緒に、ですか」 【オーレリア】「うん。あなたのための名前だもの」 オーレリアは門の向こうの空を見上げた。 濡れた石畳に、群青の色がうっすら映っている。 昼でもなく、夜でもない。 冷たく見えるのに、どこかやさしい色。 【オーレリア】「この色、あなたに少し似ていると思ったの」 【少女】「私が、ですか」 【オーレリア】「うん。冷たく見えるのに、暗くはない。静かなのに、ちゃんと明日へ続いている感じがして」 少女は黙って、その空を見上げた。 【オーレリア】「……ノエリス。前に本で読んだ、古い地方の響きなの。夜の手前にある静けさ、みたいな意味だったと思う」 【少女】「ノエリス……」 【オーレリア】「正確な意味は、少し違うかもしれない。でも、あなたを見ていたら、その響きを思い出したの」 少女は、その響きを口の中で確かめた。 知らない名前のはずだった。 けれど、不思議と胸の奥にすっと落ちた。 【オーレリア】「嫌なら、変えてもいいから」 オーレリアは少し照れたように笑った。 【オーレリア】「理由まで勝手に考えちゃったけど……押しつけたいわけじゃないの」 少女は思わず、くすっと笑った。 【少女】「そんなふうに理由まで話されたら、断れないじゃないですか」 【オーレリア】「じゃあ……?」 少女は門の内側へ、一歩踏み出した。 【ノエリス】「はい。今日から私は、ノエリスです」 オーレリアの顔が、ぱっと明るくなる。 【オーレリア】「ようこそ、ノエリス。ヴァルモント家へ」 屋敷の窓には、あたたかな灯りがともり始めていた。 ノエリスはその光を見つめながら、胸の奥で静かに誓った。 傷つけるためではなく。 勝ち誇るためでもなく。 この人の明日から、怖いものを少しでも減らすために。 私は、負けない。 その夜、屋敷の鐘が鳴る前に。 ノエリスは誰にも見られない中庭の片隅で、自分の足音が消える場所を探していた。 古びた布に包まれた細長い荷は、すぐそばに置いたまま。 まだ、ほどかない。 けれどその包みだけが、群青の夜の中で、彼女の忘れた過去を静かに覚えているようだった。 第二話へつづく... ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。 🌧️🌌🕯️🗝️ ──────────── "The English lyrics are listed below after the Japanese lyrics." 冷えた胸の奥に 言えない影を抱いて 誰にも見えないように 息だけをしていた 差し出された声が こわいほどやさしくて 逃げる理由ばかりを ひとつずつほどいた 見つけてくれた まだ消えないわたしを 何も持たない手に 残っていたぬくもりを 呼ばれたその声が 胸の奥で灯って 帰る場所なんてないと 思っていた夜がほどけた うつむいた時間に 慣れすぎていたから まぶしい言葉さえも 最初は信じられず それでもその瞳は 責めることも急かすこともなく 震える沈黙ごと そっと受け止めていた 聞こえていたよ 忘れかけた鼓動が ひび割れた心で まだ誰かを呼んでいた もらったその声を 何度も確かめて 空っぽだったわたしに 小さな明日が生まれた 強くなりたいなんて きれいには言えないけど この手に残るものを もう失くしたくない 見つけてくれた まだ消えないわたしを 何も持たない手に 残っていたぬくもりを 呼ばれたその声が 胸の奥で灯って 帰る場所なんてないと 思っていた夜がほどけた ──────────── Deep inside my frozen heart I held a shadow I could not say Breathing softly, out of sight So no one else would see me break Then the voice you gave to me Was almost too gentle to believe All the reasons I had to run Came undone, one by one You found me there The part of me still glowing faint In these empty hands of mine There was warmth that still remained When I heard you call to me Something lit inside my chest The night I thought had nowhere home Slowly loosened from its depths I had grown too used to days With my eyes turned to the ground Even words that shined too bright Felt too hard to trust somehow Still, the kindness in your eyes Never blamed or hurried me Even all my trembling silence You received so tenderly I could hear it there A heartbeat I had almost lost Through the cracks inside my heart It was calling out for someone Every time I held that voice I would feel it once again In the hollow place inside me A small tomorrow began I cannot say it beautifully That I want to become strong But what still remains within my hands I do not want to lose anymore You found me there The part of me still glowing faint In these empty hands of mine There was warmth that still remained When I heard you call to me Something lit inside my chest The night I thought had nowhere home Slowly loosened from its depths

