Song Cover Image

風を継ぐ旅路 —— 逗子から箱根へ

V6

潮騒 (しおさい) が背中を押す、葉山(はやま)の朝の匂い きらめく御用邸(ごようてい)の緑をかすめ 鎌倉の谷戸(やと)に眠る歴史の気配を感じながら 車輪は乾いたアスファルトを滑り出す 逗子(ずし)の渚(なぎさ)をあとにすれば 水面 (みなも) の青は次第に深く、潮風が遠のく 江の島へ続く長い橋のたもと 藤沢(ふじさわ)の街並みが穏やかな生活を映し出し 茅ヶ崎(ちがさき)の潮風は、どこか自由なサザンのリズムを宿す 海沿いを離れ、相模川(さがみがわ)を渡る頃 平塚(ひらつか)の七夕(たなばた)の笹竹(ささたけ)が空を仰ぐように 風は少しずつ、大地へと物語をかえていく 大磯(おおいそ)の静かな別荘地に歴史の波音が響き 小田原(おだわら)の城門が、いよいよ西への扉を開く 城下町を抜け、車体は一気に山懐(やま懐=やまふところ)へ 箱根湯本(はこねゆもと)の湯けむりが、しっとりとした白濁(はくだく)の香りを漂わせ 急坂を登る登山電車の警笛(けいてき)が、山々にこだまする 宮ノ下(みやのした)の古い洋館が歴史の深さを語り 強羅(ごうら)の豊かな自然が、季節ごとの彩(いろど)りを添える そして、霧の深まる芦ノ湖(あしのこ)のほとり 元箱根(もとはこね)の赤い鳥居が水面 (みなも) に静かに浮かび 箱根関所(はこねせきしょ)の厳(おごそ)かな空気が、旅の終着を告げる 海から山へ、風から霧へ 神奈川の青と緑のグラデーションを縫って ひとつの物語が、静かに峠(とうげ)を越えていく