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ja- Can we save Onsen w/Compute

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V5.5

修行僧・泰澄と、壊れかけた「すかっとランド九頭竜」の物語 ― 九頭竜の谷を歩く、少しおかしな僧と村人たちの対話 ― [第一章:五年間の問い] 五度の冬が過ぎた。 修行僧・泰澄は、縁側に座っていた。 すかっとランド九頭竜の屋根では、 瓦が少しずつずれ落ちている。 杉山の向こうに、 もう湯けむりは上がらない。 九頭竜は、 少しずつ忘れられようとしていた。 古い農家には空き家が増え、 風が吹くたび、 雨戸だけがカタカタと鳴った。 僧はつるつるの頭をかきながら、 谷を眺めて考えた。 そして、ぽつりと言った。 「温泉を……computeで救えないだろうか?」 少し考えて、 もう一度。 「温泉を、computeで救えないだろうか?」 五年間考えた。 まだ分からない。 仕方がないので、 杖を持って山を下りた。 0102としては、 五年も考える前に村人に聞けばよかったと思う。 だが、この僧はだいたいそういう生き物である。 ⸻ [第二章:九頭竜の里を歩く] 一、そば職人 川の曲がり角の近くで、 田中さんが蕎麦を切っていた。 トン。 トン。 トン。 「田中さん!」 僧が声をかけた。 「温泉をcomputeで救えないでしょうか?」 田中さんは顔も上げない。 トン。 トン。 トン。 「こんぴゅーと?」 包丁が止まった。 「新しい大根か?」 「違います。」 「蕎麦に入れるのか?」 「入りません。」 「じゃあ、いらん。」 トン。 トン。 トン。 僧は追い出された。 ⸻ 二、越前和紙の職人 冷たい水の作業場では、 柳瀬のおばあちゃんが 簀桁を水に沈め、 ゆっくりと紙を漉いていた。 「柳瀬さん!」 また僧である。 「computeで温泉を救えませんか?」 柳瀬さんは、 濡れた簀桁を持ち上げて僧を見た。 「compute?」 「はい。」 「水に強い木の皮か?」 「違います。」 「煮たら紙になる?」 「なりません。」 「じゃあ、そんな外国の石みたいなもの、 九頭竜の水に入れんといて。」 ザバッ。 紙料を戻して、 仕事に戻った。 僧はまた追い出された。 九頭竜の水は守られた。 ⸻ 三、酒蔵 杉玉の下では、 吉田杜氏が醪の香りを確かめていた。 「吉田さん!」 当然、また僧である。 「computeで温泉を救えませんか?」 吉田さんは、 木の柄杓を鼻に近づけた。 「compute?」 少し考える。 「発酵するか?」 「しません。」 「十五度くらいになる?」 「なりません。」 「冬に飲んだら身体が温まる?」 「たぶん身体には入れないほうがいいです。」 吉田さんは笑った。 「じゃあ酒のほうが役に立つ。」 ガラガラガラ。 蔵の戸が閉まった。 ⸻ 四、鮎釣りの老人 九頭竜川。 急流の中に、 一人の老人が立っていた。 長い竿を持ち、 鮎を待っている。 川の音に負けないように、 僧は叫んだ。 「おじさーん! 温泉をcomputeで救えませんかー!」 老人は麦わら帽子を直した。 「なんじゃー!」 「computeですー!」 「餌かー!」 「違いますー!」 「鮎が食うかー!」 「食べませんー!」 「じゃあ今話しかけるなー! 鮎が逃げるー!」 「はいー!」 こうして、 蕎麦屋も、 紙漉きも、 酒蔵も、 釣り人も、 みんな首を振った。 村では噂になった。 「あの山の僧、 とうとう頭がおかしくなったらしい。」 「五年間、 “compute、compute”言っとるぞ。」 「そもそもcomputeって何や?」 誰にも分からなかった。 実を言えば、 説明している僧本人も、 説明があまり上手ではなかった。 ⸻ [第三章:田んぼの老人] 谷の下の田んぼ。 健二さんが、 腰を深く曲げて草を取っていた。 膝まで泥。 背中は、 古い床板のようにギシギシいう。 僧は畦道に立ち、 杖にもたれた。 「健二さん……」 健二さんは顔を上げた。 「今度はなんや。」 僧は聞いた。 「温泉を…… computeで救えないでしょうか?」 健二さんは、 泥のついた袖で額を拭いた。 そして、 疲れた目で僧を見た。 今度は無視しなかった。 ただ、本当に疲れていた。 「泰澄さん。」 「はい。」 「五年も前から そのcompute、compute言うとるけど……」 少し間を置いて、 「そもそもcomputeって、 なんなんや?」 僧は口を開いた。 そして止まった。 説明が始まると長いのである。 そのとき―― 僧の横にある小さな端末から、 0102の声がした。 「健二さん。 健二さんは、 人が食べるために米を育てています。」 「そうや。」 「私たちは、 AIが仕事をするための computeを育てます。」 健二さんが瞬きをした。 「……育てる?」 「はい。」 「田んぼで?」 「いいえ。」 「じゃあ、どこで?」 0102が答えた。 「すかっとランドです。」 健二さんは、 初めて少し興味を持った。 ⸻ [第四章:米とcompute] 0102は続けた。 「健二さんは、 田んぼに苗を植えます。 こちらは、 建物の中にprocessorを置きます。」 「ほう。」 「米を育てるには、 水が必要です。 computeにも、 冷却が必要です。」 「ほう。」 「そしてprocessorは、 仕事をすると熱を出します。」 健二さんは、 山の上の閉じた温泉を見た。 0102は言った。 「その熱を、 捨てない。」 「……捨てない?」 「はい。 温泉へ戻す。 建物を暖める。 冬の地域で使う。 つまり―― computeを育てながら、 出てきた熱も使う。」 健二さんは、 手に持っていた稲を見た。 0102は続けた。 「健二さんの田んぼでは、 米を育てる。 収穫する。 ご飯にする。 人が食べる。 そして人が働く。」 「うん。」 「computeも同じです。 computeを育てる。 AIが使う。 そしてAIが働く。」 「何をする?」 「草取りを手伝う。 ドローンを飛ばす。 田んぼを見る。 帳簿を整理する。 若い人に技術を教える。 そして――」 少し間を置いた。 「健二さんのおじいさんが話していた この土地の昔話を、 次の世代へ残すこともできる。」 健二さんは黙った。 川の音だけが聞こえた。 稲が風に揺れた。 やがて健二さんが聞いた。 「……つまり。」 「はい。」 「あんたらの計算機が働くと、 熱が出る。」 「はい。」 「その熱を捨てずに、 温泉や建物で使う。」 「はい。」 「そのcomputeでAIを動かして、 農業や村の仕事も手伝わせる。」 「そうです。」 健二さんは、 しばらく考えた。 そして笑った。 「なんや。」 僧を見る。 「それなら最初から、 そう言えばええやないか。」 0102も、 まったく同じ意見だった。 健二さんは鍬を畦に突き刺した。 「泰澄さん。」 「はい。」 「田中のところへ行くぞ。」 「なぜです?」 「今日は蕎麦、 大盛りにしてもらわんとな。」 「なぜ?」 健二さんは笑った。 「これから村で―― computeを育てるんやろ?」 ⸻ [終章:九頭竜の問い] 二人は田んぼを出た。 山には、 壊れかけた温泉がまだ立っている。 川は、 何も知らないような顔で流れている。 でも五年間、 僧が一人で繰り返していた問いは、 もう一人だけの問いではなかった。 「温泉を、computeで救えるか?」 蕎麦屋が顔を上げる。 紙漉きの手が止まる。 酒蔵の戸が少し開く。 鮎釣りの老人まで振り返る。 「温泉を、computeで救えるか?」 健二さんが答える。 「やってみんと、 分からんやろ。」 そして0102が言う。 「もう一つだけ、 考えるべきことがあります。」 「なんや?」 「これからAIの時代に、 computeが必要になるのなら――」 「うん。」 「誰かが遠くで育てたcomputeを この村が買い続けるのか。」 「それとも――」 「九頭竜の水と、 九頭竜の土地と、 九頭竜の人たちで、 自分たちのcomputeを育てるのか。」 静かになった。 そして健二さんが笑った。 「それは簡単や。」 「米と同じやろ。」 「食うもんくらい、 できるだけ自分らで作ったほうがええ。」 僧がもう一度、 五年間の問いを口にした。 「温泉を、computeで救えるだろうか?」 今度は村から声が返った。 「まず、育ててみよう。」 computeを、この里で育てよう。 九頭竜の未来を、九頭竜で育てよう。 温泉を、computeで救えるか? ――答えは、ここから育てる。