
光を求めて
ローカル線が 終わる ドアが 開いた 都会の 空気 流れる 人の群れ 俺は ここで 何者かに なる 親の反対を 押し切って 目指した街は まぶしすぎた 夢を 見ているのかも しれない でも 夢では 終わらせたくない LINEを 開く 彼女からの 応援の メッセージ 地盤が 整ったら こっちで 一緒に 暮らそう 俺は 笑って スマホを 閉じた 電車を 降りて 一歩を 踏み出した 改札を 抜ければ 始まると 思っていた だけど 改札の先に また 改札が あった 出口の 矢印は 右を 指していた 右へ 行った 人の 波があった この流れに 乗れば 外へ 出られる そう 思った 誰も 迷っていない顔で 歩いていた この人たちは 地上を 知っている 俺も その背中を 追った 階段を 降りた 降りた まだ 降りた 辿り着いた 先に 空は なく ホームが あった 光を 求めて 俺は 歩いた 夢を 抱いて この街に 来た なのに まだ 空を 見ていない ビルも 風も 未来も 何ひとつ 触れていない 俺は ここで 何者かに なるはずだった 今は ただ 地上に 出たい 引き返そうと した 来た道が もう わからない 地図を 開いた 青い点が 震えていた お前も わからないのか 駅の中で 異変があれば 引き返せと どこかで 聞いた気がする でも 異変じゃない 場所を まだ 見ていない 矢印は 増える 改札は 立ち塞がる 階段は 下る 光は 遠ざかる 人の波が 来る 押される 流される また ホームに いる 駅員さんに 聞いた 出口は どこですか この先を 右 突き当たりを 左 階段は 上らず 連絡通路を 抜けて 青い案内の 先 黄色い表示の 手前 ありがとうございました 俺は 笑った なんの 隠しコマンドですか 右とは どっちだ 突き当たりは いくつある 青は 三つ 黄色は 七つ 光を 求めて 俺は 歩いた 夢を 抱いて この街に 来た なのに まだ 街は 始まらない 空も 夜も 約束も 何ひとつ 見えていない 俺は ここで 何者かに なるはずだった 今は 自分が 何者かも わからない スマホが 鳴った 彼女から だった 無事 着いた? 街は どう? 返信欄に 指を置く 着いたよ そう打って 消した 俺は まだ どこにも 着いていない 気づけば 俺は 人の波に 押されて さっき降りたはずの ホームに 戻っていた ドアが 開く 降りる人 乗る人 迷わない 顔 俺だけが 逆らえず 来た時と 同じ電車に 押し戻された ベルが 鳴る ドアが 閉まる 白い光が 窓の外を 流れていく 下りの 電車に 揺られながら 涙が 出た 俺は まだ 東京を 歩いていない

