デラシネの肖像 III - オタサーの姫 - 〜とある学生のキャンパスライフ〜 [Intro∶序文] アタシは、“姫”と呼ばれていた。 けれどそれは、 優しさの名をした監禁だった。 [Scene 1:記憶] アタシ、ホントにそんなつもりないの。 誰も信じてくれないけど、 中学までは、いじめられてばかりだった。 いつも泣いてたんだ。 学校行きたくないって、何度も言った。 [Scene 2:転生] 高校に入って、世界が変わった。 過去を知らない人たちは、 アタシをただの「女の子」として見てくれた。 それが、こんなにも温かいことだなんて知らなかった。 [Chorus:疑問と狭間] 愛されるって、何だろう。 イジメられた過去と、 大切にされる今のあいだで、 アタシは迷っていた。 [Scene 3:違和感] わかったの。 あの頃のいじめも、 今の好意も。 どちらも、“対象化”の裏返しなんだ。 アタシはいつも、“誰かの物語”の中でしか存在できなかった。 [Scene 4:居場所] サークルの部屋。 笑い声と、気配。 「大丈夫?」と手を握られるたび、 わたしは少しずつ、“誰かの特別”になっていった。 でもそれは、わたしの特別じゃなかった。 [Chorus:修得と拡張] 満たされるって、何だろう。 叶えられる度に、 欲望はその段階をあげる、 アタシは変わってゆく。 [Scene 5:崩壊] いつの間にか、女の子がいなくなっていた。 残ったのは、 視線と、沈黙。 そして“姫”という役だけ。 [Bridge∶露見] 優しかった視線は、いつしか 色欲(イロ)の視線になっていた 沈黙の冷戦 横並びからの抜け駆けが蔓延してゆく 触れたい 味わいたい 独占したい 理性を欲望が喰らってゆく その視線の先にある下心 アタシに向けられているのは もう優しさではなく 劣情だとわかってしまった [Chorus:疑問と強迫] 愛されるって、何だろう。 求められることに、 応えなくてはイケナイの?どうして? アタシが姫だから?。 [Chorus∶拒絶と断絶] お断りだよ、そんな事。 本当の優しさは、 アタシを籠の鳥にはしないだろう これは偽りの愛 [Outro:再生] アタシ、ホントにそんなつもりなかったの。 でも、もうわかってる。 アタシを縛ってたのは、 “姫”という幻想を抱(イダ)いてる誰かの 妄想だったんだ だから、もう怖くない。 今日もまた、 誰かの視線が交差するキャンパスで―― アタシは、 「アタシ」を取り戻していく。