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桜前線と共に来たる憂鬱 with imaesan K

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V5.5

開花予報が流れた夜 天気じゃなくて 合図みたいに 赤く囲った来週の日付 祝日みたいで そうじゃなくて ベランダの物干し竿に 今朝も二枚 貼りついてる 洗い直した白いシャツに 薄桃色のキスマーク 五時半に起きて 箒を握る まだ眠そうな 空の下で 掃いても掃いても降ってくるから 木の名前まで どうでもよくなる 排水溝に詰まった花びら 長靴の先で 黙って寄せる 濡れたコンクリートに残る やわらかい春の死にかけ きれいですねって すれ違う声 ええ そうですね その足もとで濁ってる水は たぶん誰も見ない ああ また来たよ この季節が きれいだってことくらい 知ってるよ 朝五時の箒が 先に立つ 花びらの数だけ 息が重い 世界が浮かれる 二週間 私はただ 掃いている 夜桜の下 ブルーシートが鳴る 缶ビールだけが よく喋る 知らない男の 知らない歌が 妙に長く 風に残る 朝になれば もう誰もいない 弁当の殻と 潰れたカップ コンビニ袋にも入らなかった 昨夜の機嫌の 抜け殻たち 最高だったって 上がってる写真 位置情報だけ うちの前 踏まれた芝の匂いの中で 私は膝をついてる ああ また来たよ この季節が 感動なんて 手が空いたらでいい 朝五時の箒が 先に立つ 花びらの数だけ 息が重い 誰かの特別な一日は ここではただ 散らかる 引っ越してきた春 泣いたんだ 窓の外が 満開で この街を選んでよかったって ほんとに少し 思ってた 返してほしいとは言わないけど せめて空き缶は 持って帰って 来年もきっと 同じことを言う 今年こそは ちゃんと見ようって でも蕾を見たら 手が伸びる 玄関の隅の 箒の柄に 散ったあとの静けさだけが この街を少し 私に戻す 桜はきれいだよ 本当にね …掃き終わったあとなら