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ただ僕は寝たいだけ

V5.5

「また朝が来る」 その事実だけで 少し吐きそうになる 午前四時十二分 点けっぱなしのモニター 閉じたはずの通知欄が 脳裏でまだ光ってる 眠らなきゃ駄目だって 考えるほど 息が浅い ベッドの中で心拍だけ 他人みたいに暴れてる 冷蔵庫の駆動音 換気扇 秒針の動く音 全部うるさいはずなのに 世界だけ妙に静かだ 昨日まで出来てたこと なぜか今日は手につかない 返信出来ないままのDM 未読だけ積もっていく 眠れないんじゃない もう「眠る」が分からない 瞼を閉じても脳だけが 壊れた機械みたいに回る 窓の外だけ朝になっていく それが今は少し怖い 君が壊したんじゃない 壊れるまで削られただけだ 昼過ぎ 鏡越しの顔 誰だったか思い出せない コンビニの光が痛くて 意味もなく俯いて歩く 「ちゃんと寝れば治る」 その“ちゃんと”が出来ない 横になるたび失敗して 夜が来るたび焦ってる 眠気だけ置き去りで 身体だけが先に腐る 伝えたい声も消えてって 乾いた呼吸だけが残る 薬の空シート 机の上 散らばったまま 助かりたいのかさえ 分からなくなる瞬間がある 眠れないんじゃない 脳が停止してくれない 感情だけ摩耗して 涙さえ上手く落ちない 世界は「甘え」って言う でも生存音は悲鳴だった 君は壊れたんじゃない ずっと限界を超えていただけだ 午前五時 白み始める空 新聞配達のエンジン音 電線にとまる鳥の声 隣家のドアが閉まる音 全部が 「また今日が始まる」って 責めてくる 眠れない夜より 自分を嫌いになる朝の方が ずっと ずっと 怖かった 朝焼けに馴染めない この身体を引きずって それでも呼吸だけは まだ止まってくれない 夜を引きずったままでいい 綺麗に笑えなくていい ただ君が 自分を殺さないでいてくれ 眠れない街の中 正常なふりをした怪物たち その中で震えてる君を 僕はちゃんと人間だと思う