薄紅の月が 水面に滲む夜 風鈴の音だけが 過去を呼び戻す 畳に落ちた影は 誰の名をなぞるの… 障子越しの吐息 まだ消えないまま ああ 逢いたいと言えぬまま 祈りは灰になる 結ばれぬ運命(さだめ)なら せめて夢で もう一度 狐火ゆらり 指先を惑わせ 嘘と真の境 溶けてゆく 鈴の音に 心を縛られて 逃げ道さえ 美しくて 血の色に似た椿 雪に伏して あなたの影を 抱いたまま散る ああ 忘れられれば楽なのに 想いは業(ごう)となる この身が朽ち果てても 未練だけ 生きている 夜明け前 鐘が鳴る 私はまだ 此処に… いる 夢か現(うつつ)か 目覚めても風は無く 時は止まったまま…