
【Below the Soil】 (地中から聞こえるようなピアノ) Voice Delicate: ねえ 聞(き)こえる? 土(つち)の下(した)から 小(ちい)さな音(おと) Voice Warm: 誰(だれ)かが残(のこ)した 言葉(ことば)じゃない Voice Delicate: 誰(だれ)かが忘(わす)れた 歌(うた)でもない Duo: 長(なが)い時間(じかん)を 黙(だま)っていた石(いし)の音(おと) 【Excavation One:礎石(そせき)】 土(つち)を払(はら)う 指先(ゆびさき) 少(すこ)しずつ 輪郭(りんかく)が現(あらわ)れる 何(なに)かを支(ささ)えていた 大(おお)きな石(いし) 現在(いま)は 空(そら)だけを支(ささ)えている 七重塔(しちじゅうのとう)の 心礎(しんそ)と伝(つた)わる石(いし) 見上(みあ)げても 塔(とう)はない けれど ここに塔(とう)があったという重(おも)さは まだ地面(じめん)の中(なか)に 残(のこ)っている 【Excavation Two:天平十三年(てんぴょうじゅうさんねん)】 (アップライトベースが加わる) 天平十三年(てんぴょうじゅうさんねん) 聖武天皇(しょうむてんのう)が願(ねが)った 国(くに)の安穏(あんのん) 実(みの)る稲(いね) 穏(おだ)やかな暮(く)らし 離(はな)れた土地(とち)にも 学(まな)びと祈(いの)りが届(とど)くように 全国(ぜんこく)へ建(た)てられた 国分寺(こくぶんじ) その一(ひと)つが 阿波國分寺(あわこくぶんじ) Voice Warm: 行基菩薩(ぎょうきぼさつ)が この地(ち)を開(ひら)いたと伝(つた)わる Voice Delicate: 薬師如来(やくしにょらい)へ 人々(ひとびと)の安(やす)らぎを願(ねが)う 【Excavation Three:The Great Temple】 (ドラムとギターが加わる) 四万七千(よんまんななせん)平方(へいほう)メートルほどの 広(ひろ)い寺域(じいき) 中央(ちゅうおう)に金堂(こんどう) 空(そら)へ伸(の)びる 七重塔(しちじゅうのとう) 柱(はしら) 屋根(やね) 経典(きょうてん) 祈(いの)り 遠(とお)くから来(き)た人(ひと)も 近(ちか)くで暮(く)らす人(ひと)も 同(おな)じ境内(けいだい)で 手(て)を合(あ)わせる Voice Warm: 大(おお)きなものは ずっと残(のこ)ると思(おも)っていた Voice Delicate: 立派(りっぱ)なものは 失(うしな)われないと思(おも)っていた 【First Stone Refrain】 (明るいアイドルロック) 石(いし)は黙(だま)って 覚(おぼ)えている 名前(なまえ)が変(か)わっても 時代(じだい)が変(か)わっても なくした形(かたち)を なぞるより ここから 新(あたら)しい景色(けしき)をつくる 石(いし)は黙(だま)って 待(ま)っている 誰(だれ)かがもう一度(いちど) 触(ふ)れる日(ひ)まで 【Changing Schools】 最初(さいしょ)は 法相宗(ほっそうしゅう) 弘仁年間(こうにんねんかん)には 真言宗(しんごんしゅう)へ 教(おし)えが変(か)わり 時代(じだい)が変(か)わり それでも 人(ひと)はここへ歩(ある)いてきた 同(おな)じ建物(たてもの) 同(おな)じ言葉(ことば) それだけが 受(う)け継(つ)ぐ方法(ほうほう)じゃない 変(か)わりながら 残(のこ)るものもある 【Fire Cut】 (鋭いギターノイズ) 天正(てんしょう)の兵火(へいか) 屋根(やね)が崩(くず)れる 柱(はしら)が倒(たお)れる 七重塔(しちじゅうのとう)が 空(そら)から消(き)える 歌(うた)が 途中(とちゅう)で切(き)れる (全楽器停止) 【The Empty Centuries】 …… 塔(とう)がない 金堂(こんどう)がない かつての姿(すがた)を 知(し)る人(ひと)もいなくなる 草(くさ)が伸(の)び 雨(あめ)が降(ふ)り 土(つち)が 礎石(そせき)を覆(おお)っていく Voice Delicate: 忘(わす)れられたの? Voice Warm: いいえ 見(み)えなくなったものが 消(き)えたとは限(かぎ)らない 【Reconstruction:寛保元年(かんぽうがんねん)】 (ピアノ一音から再開) 寛保元年(かんぽうがんねん) 千七百四十一年(せんななひゃくよんじゅういちねん) 速水角五郎(はやみかくごろう)によって 伽藍(がらん)が再建(さいけん)される けれど 昔(むかし)と同(おな)じ姿(すがた)ではない 宗派(しゅうは)は 曹洞宗(そうとうしゅう)へ 戻(もど)ったのではなく 新(あたら)しく始(はじ)まった Voice Warm: 私(わたし)は過去(かこ)を歌(うた)っていた Voice Delicate: 私(わたし)は現在(いま)を歌(うた)っていた Duo: ここから 役割(やくわり)を交換(こうかん)しよう 【Role Exchange】 Voice Delicate/Past: 私(わたし)には 七重塔(しちじゅうのとう)が見(み)える 現在(いま)はない 大(おお)きな屋根(やね)が見(み)える Voice Warm/Present: 私(わたし)には 並(なら)べ直(なお)された石(いし)が見(み)える 現在(いま)ここにある 新(あたら)しい景色(けしき)が見(み)える Voice Delicate: なくしたものを 数(かぞ)える過去(かこ) Voice Warm: 残(のこ)ったもので つくり始(はじ)める現在(いま) Duo: どちらも 同(おな)じ場所(ばしょ)の物語(ものがたり) 【Stone Garden Assembly】 (ヴィブラフォンとブラシドラム) 一(ひと)つ目(め)の石(いし) 大(おお)きく 高(たか)く 二(ふた)つ目(め)の石(いし) 斜(なな)めに 支(ささ)える 三(みっ)つ目(め)の石(いし) 少(すこ)し離(はな)して 余白(よはく)をつくる 水(みず)のない池(いけ)に 流(なが)れをつくり 山(やま)ではない場所(ばしょ)に 築山(つきやま)をつくる 石(いし)は動(うご)かない けれど 石(いし)と石(いし)の間(あいだ)を 見る人(ひと)の心(こころ)が 歩(ある)いていく 【The Garden Remembers】 江戸時代(えどじだい)の後期(こうき) 庭(にわ)は 大(おお)きく組(く)み直(なお)された 昔(むかし)の伽藍(がらん)を 再現(さいげん)するためではなく 石(いし)に 別(べつ)の役目(やくめ)を与(あた)えるため 二千年(にせんねん) 阿波国分寺庭園(あわこくぶんじていえん)は 国(くに)の名勝(めいしょう)となった 失(うしな)った歴史(れきし)も 再(ふたた)び始(はじ)めた歴史(れきし)も 一(ひと)つの庭(にわ)の中(なか)で 同(おな)じ空(そら)を見(み)ている 【Second Stone Refrain】 (静かなチェンバージャズ) 石(いし)は黙(だま)って 覚(おぼ)えている 名前(なまえ)が変(か)わっても 時代(じだい)が変(か)わっても なくした形(かたち)を なぞるより ここから 新(あたら)しい景色(けしき)をつくる 石(いし)は黙(だま)って 待(ま)っている 誰(だれ)かがもう一度(いちど) 触(ふ)れる日(ひ)まで 【What Reconstruction Means】 元(もと)に戻(もど)せないことを 失敗(しっぱい)と呼(よ)ばなくていい 前(まえ)と違(ちが)うことを 偽物(にせもの)と呼(よ)ばなくていい なくした形(かたち)があるから 生(う)まれる形(かたち)もある 空(から)っぽになった場所(ばしょ)にしか 置(お)けない石(いし)もある Voice Delicate: もう一度(いちど) 同(おな)じ私(わたし)にならなくていい Voice Warm: ここまで来(き)た私(わたし)で 新(あたら)しい庭(にわ)をつくればいい 【Seven Notes】 國分寺(こくぶんじ) なくした形(かたち)から 庭(にわ)になる (第一音:ピアノ) 過去(かこ) (第二音:ギター) 記憶(きおく) (第三音:ピアノ) 灰(はい) (第四音:ギター) 礎石(そせき) (第五音:ピアノ) 再建(さいけん) (第六音:ギター) 庭(にわ) (第七音:ピアノ) 未来(みらい) (チェロの一音で解決)

