
艶やかな宵の帳、路地裏の石畳に 影をひそめて、私は誰にも名を告げぬままで 月も息を飲む、物の怪の宴を仰ぎ 甘き囁き腕をひねる、氷のような指先にて 心の隙間、誰にも届かぬ 渇望だけが満ちる 初めて奪われた夜は、遠きあの日の薄明りに 滲んだ涙、呼ばれる名前、すべて霞んで消えたままで 肌の奥に棲む棘 毒を忍ばせ隠れ歩むように 浅い契りは呪詛の夢、腐れ縁すら花に変わる 幾度もなぞる名も知らぬ影の手 私をなぞりながら 重ねる肌、闇の沼に堕ちてゆく 愛しさは呪い、狂い踊る祈りのように 私は人を喰らう、夜行の轆轤首として 夢とも嘘とも知れぬ境にて 絡めとるは夜半の吐息が 誰そ彼の顔も見分けぬ闇に 独り、雨音に沈む声のなか 誰の名も知らぬままで 朱の爪で爪弾く寂しき逢魔ヶ刻を歩き 雲間の愛は幻の鈴の音と共に 赦しを乞いながら、また誰かを惑わせ続ける 刹那の愉悦 月の気配に消えていくように 夢の中で逢えたならば 傷と蜜の味で溺れて 真の私など 誰も知りえぬまま 夜は明けず、欲望と戯れつつ 白き幻影も砕け散り ひたすら渇く魂よと 交わした約束は、ひそやかな契りのなか 鳴り響く鐘の音で裂かれた昔を思い 救いは求めぬ、涙も声も投げ打ってなお 私はただ愛に飢える鬼女でいよう 紅の唇、僅かな微笑みをこぼして 甘く刺すことばの裏に潜む毒も 孤独な舞、妖しく揺れる影も醒め 名もなきまま霧に隠れて低く 絡まる髪の先で運命を紡ぎ続ける 手招きするその温もり、刹那の幻を抱いて 身も心も千切れてなお、薄明りの下 踊る慟哭よ 夜明け前、静かに身を翻し歩き 背に纏う悲しみに耳を澄ませて 満たされぬ思い抱え、新たな餌を求めつつ また夜の闇に消えていく影として 誰にも知られぬ逢魔ヶ刻の妖として漂う

