
エリーゼのためじゃない
薄いカーテンが揺れてる 夜明け前の排気音 冷えた灰皿の隅で 名前のない熱が死んだ 壊れかけた照明が 周期的に瞬きをする 眠れないままの部屋で 呼吸だけがうるさい 「優しくなれよ」なんて 簡単に言わないでくれ その言葉の温度だけで 吐き気がする夜もある 濡れたアスファルトに 映る知らない顔 僕は僕を演じながら 少しずつ削れていく 綺麗な愛情表現なら どこかで売ってるだろ でもそんなものじゃ 何も救われない エリーゼのためじゃない こんな歌じゃない 痛みを誤魔化すために 鳴らしてるだけだ エリーゼのためじゃない 君のためでもない それでも消えない影が まだ胸に残ってる 冷蔵庫のモーター音 午前三時の白い壁 積み上がった沈黙が 天井まで伸びていく 壊したかったのは 世界じゃなくて 期待される僕自身だった たぶん最初から 「わかってるつもり」 そんな目で見ないでくれ 触れられるたび 形が崩れていく 窓の外 サイレン 遠ざかって消えていく 僕だけ置き去りみたいな 静かな夜だった 愛とか救済なんて 軽々しく口にするな そんな綺麗事なら もう聞き飽きてる エリーゼのためじゃない 祈りなんかじゃない 行き場を失くしたノイズを 吐き出してるだけだ エリーゼのためじゃない 忘れたいわけじゃない 壊れかけた感情だけ まだ息をしている 青白い非常灯 剥がれかけたポスター 閉じ忘れた窓から 夜が入り込んでくる もう戻れないとか そんなことじゃなくて 最初から どこにも行けなかった エリーゼのためじゃない 愛なんかじゃない それでも名前を呼ぶたび 少しだけ苦しくなる エリーゼのためじゃない 終わらせるためでもない 冷え切ったこの部屋で まだ君を燃やしてる 薄いカーテンが揺れてる 朝焼け前の静寂 誰にも聴こえないまま ノイズだけが残ってる


