
道端の草が小さな花を咲かせた。 派手でもなく、鮮やかでもない。 地味で淡い色の花だった。 「おかしなところに咲く花もあるものだ」 散歩中の紳士が呟いた。 「喜んで咲いてるわけではありません」 小さな声で小さな花が言い返した。 「おやおや。かわいらしい声ではないか」 「声だけはね」 「その声をもっと聴きたいものだ」 紳士は荒々しく地面から草を引き抜いた。 小さな花は悲鳴をあげ、うなだれた。 「ひどい人。死んでしまうわ」 「大丈夫。すぐに家の庭に植えてやる」 「うそつき」 「いいね、いいね。その、うそつき、って」 小さな花は黙ってしまった。 紳士も黙って家路を急ぐのだった。 しばらくすると、小さな花が尋ねた。 「その庭、広いかしら?」

