
【Verse 1】 香りを邪魔するものは捨てて 指先の記憶だけで 世界に触れる 時を外し 飾りを外し 袖の影さえ、静かに息を潜める 二八は 心を支える二割の偶然 十割は まっすぐすぎる愛のようで 五百の大地に注ぐ水は 二百五十の祈り ふるった粉が、そっと風の匂いを孕んでいく 【Verse 2】 こね鉢の底が見えぬよう 想いは大きく 静かに広がり 最初の水 二百の雫を 直接触れぬよう、遠回りに注ぎこむ 指を立て 手早くかき混ぜれば 世界はまだ“パン粉みたいな夢”の途中 残りの五十を添えたとき 指の腹は 誰かをよしよしと撫でるあたたかさ 優しさの粒は あずきのように小さく ポップコーンのように弾け やがて一つの“想い”に集まっていく 【Pre-Chorus】 つながりたがる粒たちは 互いを求め 重なり合い 気づけばひとつの未来へと まとまってゆく そのなめらかな表面は 過去のざらつきを そっと癒していく 【Chorus】(壮大に) 向こうから手前へ 巻き込むたび 心もまた 手前へ寄り戻されて きくねりが難しくても 大丈夫、と言える何かがある シワをひとつの場所に集め あとはツルツルの祈りへ 円筒が産む円錐は とんがりすぎず 富士の姿に似せて 底から見たら まんまるの静寂 そこに これからの形が眠っている 【Verse 3】 こね鉢を片づけ 打ち粉の雪を降らせた台の上へ 小さな“富士”を運び その頂にそっと手を触れる 真ん中を押し 輪郭を押し また真ん中へ戻って 手のひらより少し大きな やわらかな円を描く のし棒で中心を凹ませ 五分ごとに回しながら 世界を一周したころ 生地は静かに“きれいな丸”へ戻る 【Bridge】(詩的に、熱く) のし棒に四方から巻きつけ 四角の世界を生み出していくとき 手で触れた厚みが あなたにだけ分かる真実になる 巻き広げては打ち粉を振り 端を探りながら折りたたむ 三分の一の場所に そっと未来を重ね 上へ、下へと折りたたんだら 旅は切りの場面へ向かう 【Chorus 2】(最高潮に) まな板に“お布団”を敷いて 柔らかな帰る場所をつくる そうしなければ きゅうりのように つながった悲しみが生まれる 生地を置き 粉を振り こま板を寄せて構えたら 包丁は真ん中を握り まっすぐ直角に 静かに落とす 落とした刃を 少し倒す その繰り返しが あなたのリズムを描いていく こま板の力が強すぎれば 夢は太くゆがむ ただ“乗せるだけ”の優しさで 包丁の手の感覚を信じて 落とす――倒す 落とす――倒す その呼吸が、均等な細さを紡ぎだす 【Outro】(余韻) こま板を平行に保ちながら 誰にも分からない あなただけの感覚を研ぎ澄ませる そして あ――これか、と 確かにわかる瞬間が訪れる そのとき、この蕎麦は ただの蕎麦じゃない “あなたという物語”になる ─────────────

