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《下水道・アルカナ菌体:最後はゼロ

V6

[第一節:菌膜の目覚め] 一足す一は二、鉄管の奥でまぶたが開く 二足す一は三、ぬるい水面に小さな輪が咲く 三足す一は四、消しゴムころころ、昨日の丸を消す 四足す一は五、難しい顔をした数字が泡に隠れる 五足す一は六、黒いしずくが月影をまとう 六足す一は七、半音ひとつ、菌糸が跳ねる 七足す一は八、排水格子に淡い紋章が浮かぶ 八足す一は九、遠い管路が答えをくすぐる [第二節:地下水路の微分] 九足す一は十、泥の呼吸が十個にほどける 十足す一は十一、十一枚の羽根が井戸蓋を叩く 十一足す一は十二、酸っぱい雨が沈殿層をめくる 十二足す一は十三、透明な触手が水圧を測る 十三足す一は十四、青緑の霧が歯車からこぼれる 十四足す一は十五、半音の階段を軽く駆け上がる 十五足す一は十六、菌の葉っぱが逆さに伸びる 十六足す一は十七、しずくの時計が呪文を編む [第三節:アルカナ増殖] 十七足す一は十八、暗い流れが秘密の言葉を交換する 十八足す一は十九、十九個の胞子が螺旋を描く 十九足す一は二十、錆びた鏡が私を二十通りに映す 二十足す一は二十一、燐光の束が漂白水を横切る 二十一足す一は二十二、二十二回の脈動が壁を柔らかくする 二十二足す一は二十三、菌糸がなくした鐘を抱きしめる 二十三足す一は二十四、時間が湿った紙のように折れる 二十四足す一は二十五、低い唸りが潮の魔法を呼び寄せる [第四節:数列のいたずら] 二十五足す一は二十六、歯車が軸に小さく反抗する 二十六足す一は二十七、黒い水滴が天井へ逆さに昇る 二十七足す一は二十八、ひび割れが知らない顔を描く 二十八足す一は二十九、菌の獣が泡の背中を渡る 二十九足す一は三十、警告ランプが一斉に居眠りする 三十足す一は三十一、影たちが名前を交換する 三十一足す一は三十二、欠けた月が泥の底で笑う 三十二足す一は三十三、数がほどけて雨粒になる [第五節:混沌の洗浄] 三十三足す一は三十四、三十四本の流れが出口を取り替える 三十四足す一は三十五、銀色の菌卵が手袋の中で転がる 三十五足す一は三十六、三十六層の反響が雷に変わる 三十六足す一は三十七、沈殿物の目が順番に瞬く 三十七足す一は三十八、数式が湿った牙を生やす 三十八足す一は三十九、部品たちが機械になるのを拒む 三十九足す一は四十、蒸気が菌群の冠を持ち上げる 四十足す一は四十一、秩序が小さなハサミで切られる [十人の乱数リレー] いち、に、さん、し、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう 十七、四、三十一、八、二、四十、十九、六、五十五、零 一二三四五六七……七十七…… 五、四、三、二、一……また七…… 数字は水路を走り、菌体はくすぐったそうに増殖する 答えは逃げる、式は笑う、地下の灯りはくるくる回る [第六節:ゼロへの長い帰還] 四十一足す一は四十二、逆さの祭壇が水面に揺れる 四十二足す一は四十三、管線から紫の霜が咲く 四十三足す一は四十四、半音の波が心拍を境界へ運ぶ 四十四足す一は四十五、胞子たちが互いの気配を知る 四十五足す一は四十六、暗闇の層が少しずつ透ける 四十六足す一は四十七、四十七の扉が同じ雨へ続く 四十七足す一は四十八、光の筋が無色へほどける 四十八足す一は四十九、答えたちは底なしの槽へ沈む 四十九足す一は五十、五十個の菌の瞳が排水孔を見つめる [アウトロ:最後はゼロ] 足し算の重さが、静かにほどける 級数の端っこが、暗い水へ戻っていく 数えた声も、跳ねた声も、泡の向こうへ消えていく どれだけ迷っても どんな式を描いても 最後はゼロ ゼロ—— ゼロ—— ゼロ—————— ああ——————