終演のアナウンスが 夜風にほどけて消えた 芝生に転がる紙コップ 星屑みたいに光る 提灯だけが揺れている オカン食堂の隅で 焼きそばの煙の向こう あんたがギターを抱く 帰り支度の人波が 夜を少しずつ冷ましてく だけど私は帰れない 名前も知らないくせに 煙の向こう側 あんたは夏の亡霊 焼きそばの香りの中で 夜を盗んでいく 鉄板の赤い光が 揺れるたびに 触れたこともない記憶まで 焦げていく レモンサワーの氷だけ 静かに形を失くして 誰かの笑い声がまた 夜空の奥へ消えていく ギターケースの傷跡を 勲章みたいにぶら下げて 酔いどれ達のリクエストに 少しだけ笑っていた 湿った風が吹くたび 提灯が揺れて 7月の残り火が まぶたに刺さる 煙の向こう側 あんたは夏の亡霊 レモンサワーの月を連れて 夜に溶けていく 罪のない顔をして 胸を乱して 言えなかった言葉だけ 泡になった 煙の向こう側 あんたは夏の亡霊 触れたこともないままで また胸を焦がす 朝焼けが来る頃には 影だけ残して 焼け残った熱だけが ここにいる 煙の向こう側 まだギターが鳴っている


