
帰る場所【装甲戦士ガルド11】
[Intro] [Verse] ひび割れた世界に ひとり残されて 傷つくことにも 慣れてしまった俺は 痛みさえも気にせず 前を見ていた [Pre-Chorus] でも心が遠ざかる 何も感じなくなる このまま終わるなら それでもいいと思った [Chorus] 壊れても立ち上がるのは 何を守りたかったから 忘れかけてたぬくもりが 胸の奥で呼びかける もう二度と失くさない この手の中の光 俺が俺でいるための 帰る場所があるから [Drop] 君が呼んだ名前が 途切れかけた心を繋いだ 黒い夜がほどけて 守りたいと願う力 The light you gave me 道を照らす Your voice brought me back 俺を引き戻してくれた [Verse 2] 黒い光が 体を蝕んでく 感情に飲まれて 自分が消えていく もう分からなくなってしまった そう思ってたはずなのに なぜだろう まだ何かが残ってる [Pre-Chorus 2] 聞こえた気がした 遠い場所から 震えた声が 俺を気づかせてくれた [Build-Up] 大切な人の声が 俺を呼んでいる 手を伸ばして 待っている [Chorus] もう迷わない ひとりで抱える世界は ここで終わりにする 震えていた心が 今やっと分かったんだ 俺が探していたのは 帰れる場所だった [Bridge] どれだけ遠く離れても 君の声が道しるべになる 失くしたはずの明日が そっと光り始める 黒く染まっても 君が呼んでくれるなら 俺は戻れる 必ず戻れる [Build-Up 2] 君がいる それだけで 俺は強くなれる 守り抜ける この光を 手放さない 絶対に―― [Final Chorus] 壊れても立ち上がれる 君がそばにいるから 忘れかけてたぬくもりを 今取り戻した もう二度と失くさない この手の中の光 俺が俺でいられる 帰る場所がある [Drop] もう迷わない ひとりで背負った運命も 今手放す I found my way home Through all the darkness and pain 君が待っていてくれた それがすべてだった [Outro] 君が笑って 「おかえり」って言うから 答えたんだ ……ただいま 青い光が 夜を優しく包んでいく [End] 【Episode Story】 【第11話・帰る場所】 夜の路地。崩壊した地面の中央で、ガルドは倒れていた。黒い装甲はひび割れ、呼吸のように明滅する光が不規則に脈打っている。制御を失った力が、身体そのものを蝕んでいた。立ち上がろうとする。だが、膝が砕けるように崩れ落ちた。オルディアは静かに歩み寄る。 「……到達したな」淡々とした声。 「怒りによる感情臨界。ガルドシステム覚醒段階を確認した。やはり我々には不可能だった工程だ」 オルディアは、わずかに首を傾けた。 「人間特有の感情振幅。矛盾と執着。非合理的だが――極めて有効」ゆっくりと、ガルドの胸部コアへ手を伸ばす。 「我々オルディアは、理性によって進化した。だが理性だけでは、次の段階へ至れなかった」黒い粒子が空間に広がる。吸収フィールドが展開する。 「感情は不完全な機能だと考えていた」一拍。 「だが違った」視線がガルドへ落ちる。 「進化に必要だったのは――制御された感情だ」コアから光が引き剥がされ始める。ガルドの身体が痙攣する。 「ガルドシステムは、感情を増幅し、限界まで引き上げ、覚醒へ至らせる装置」低く続ける。 「覚醒したガルドを吸収すれば、その到達情報は我々全体へ統合される」空を見上げる。 「あのお方の望みが、ついに完成する」わずかな静寂。 「感情すら支配した、完全な上位の存在へと至れるのだ」黒い光が剥がれ、空へ流れていく。 ガルドの視界が暗く沈む。 「安心しろ」オルディアが静かに告げる。 「お前の役目は終わりだ。我々の進化の礎として、十分に機能した」ガルドの意識が途切れかけようとしていた。 瓦礫の陰。倒れていた幼馴染の身体が、微かに動いた。 「……っ……」浅い呼吸。視界が揺れる。ぼやけた夜空。耳鳴りの奥で、金属が軋む音が響いていた。 「……大丈夫かい?」低い声。記者だった。先ほど投げ飛ばされた衝撃で、息は荒い。 「気がついたかい」幼馴染はゆっくり起き上がる。 「……ここ……」状況を理解するより先に、視線が引き寄せられる。轟音。衝撃。夜の路地の中央。黒い光を噴き上げながら、戦う装甲の戦士。ガルド。その姿を見た瞬間、幼馴染の呼吸が止まる。荒々しい動き。無理を押して戦う姿。踏み込む時、ほんの少し左肩が下がる癖。 ――昔から変わらない。昔、転びそうな子どもをかばったときも。重い荷物を持とうとして無理をしたときも。同じ動きだった。胸が強く鳴る。 「……やっぱり」小さく、呟く。記者が振り向く。 「え?」幼馴染の目は震えている。恐怖ではない。確信だった。 「あの人……」息を吸う。記者の表情が固まる。 「……知り合い?」幼馴染は小さく頷く。視線は戦いから離れない。 「ずっと、変だと思ってた」 「いなくなるタイミングも、怪我して帰ってくる日も……」声が少し震える。 「でも、聞けなかった」ガルドが膝をつく。黒い光が暴走する。幼馴染の表情が歪む。 「あんな苦しそうな姿、初めて見る……」記者は戦いと彼女を交互に見る。 「……あれ、危ない状態なのか?」幼馴染はゆっくり立ち上がる。 「うん」迷いなく。 「今、あの人……自分を見失いかけてる」記者が思わず止める。 「待て、近づいたら――」だが彼女は止まらない。 「大丈夫」小さく言う。 「だって」涙を拭う。 「ずっと一人で頑張ってたの、知ってるから」戦場へ、一歩踏み出す。 オルディアは静かにガルドを観察していた。 「十分だ」感情のない声。 「ガルドシステムは完全に開いた」腕を伸ばす。空間が歪む。 「これより統合を開始する」黒い光がガルドを拘束する。膝が崩れ落ちる。意識が沈んでいく。 その時だった。 「……ねえ」小さな声。かすれるほど弱い。それでも、確かに届いた。黒い光が、わずかに揺らぐ。オルディアの動きが止まる。 「……?」もう一度。 「ねえ……」幼馴染が立っていた。震える足。それでも逃げない。 「もう、十分だよ」涙を堪えながら。 「一人で、ずっと頑張ってたんでしょ」黒い装甲が軋む。内側で、何かが反応する。 「怖かったよね」一歩、近づく。記者が息を呑む。止めるべきだと分かっている。だが動けない。 「でも……」幼馴染は微笑もうとする。 「今まで守ってくれてありがとう」その瞬間。黒い光が、崩れた。暴走していたエネルギーが逆流する。装甲の奥で、別の光が生まれる。怒りではない。守りたいという、静かな衝動。オルディアが初めて声を強めた。 「……干渉だと?」解析が追いつかない。 「感情安定化反応……?」あり得ない。怒りによって開いた覚醒が――別の感情へ書き換えられていく。黒が、ほどける。闇の亀裂から、青い光が溢れた。静かで、澄んだ輝き。装甲が再構成される。白い装束のような外殻。青い光が脈動し、暴走していた力を包み込む。ガルドが、ゆっくりと立ち上がる。呼吸が戻る。視線が定まる。 「……」静かな存在感。オルディアが後退した。 「記録にない……」理解不能という響き。ガルドが一歩踏み出す。もう黒い衝動はない。ただ、確かな意思。オルディアの声に初めて揺らぎが混じる。 「……想定外だ」青い光が、夜を照らした。 青い光を纏ったガルドが、静かに立っていた。先ほどまで暴れていた黒い衝動は、もうない。胸の奥に残っているのは、ただひとつ。 ――守りたい。その想いだけだった。視線の先。震えながらも立ち続ける幼馴染。涙をこらえ、まっすぐこちらを見ている。その姿が、胸の奥を温かく満たしていく。自分にとっての――光。オルディアが後退する。 「……変質している」感情のない声に、初めて焦りが混じる。 「怒りによる覚醒ではない。これは――」解析が止まる。理解が追いつかない。ガルドが一歩踏み出す。足音は静かだった。だが、空気そのものが変わる。青い光が広がり、暴走していた力を完全に制御していく。 「不完全な進化体が……なぜ安定している」オルディアが構える。 「感情は誤差のはずだ。計算に存在しない」ガルドは答えない。ただ、拳を握る。怒りではない。守ると決めた意志。 次の瞬間――踏み込み。一閃。青い光が一直線に走り、オルディアの身体を貫いた。衝撃が夜を震わせる。オルディアの身体が崩れ始める。 「……理解不能……」崩壊しながら、呟く。 「感情が……進化を……上回る……だと……?」最後に、ガルドを見上げる。 「……これが……あのお方の求めていた……可能性……」 光となって、消滅した。静寂。戦いが終わる。青い光が、ゆっくりと弱まっていく。装甲が粒子のようにほどける。膝が崩れた。 「……っ」変身が解け、主人公の姿に戻る。限界だった。 倒れかけた身体を、誰かが支える。幼馴染だった。震える腕で、必死に支えている。しばらく、言葉が出ない。ただ呼吸だけが重なる。そして――小さく、微笑んで言った。 「……おかえり」主人公は目を閉じる。胸の奥に残っていた緊張が、ゆっくりほどけていく。 かすれた声で、答える。 「……ただいま」夜風が静かに吹いた。 記者はその光景を見つめていた。戦いの記録ではない。帰ってきた一人の人間の姿を。


