
祈りを斬る剣
枯れた丘の上 城は沈黙し 白き旗さえ 灰にまみれて エリアスはただ 剣を下ろさず シエラの弦を じっと見ていた エリアスは問う この廃城にも おまえが歌う 真実はあるのか 異端と呼ばれた 枢機卿の名に 返すべきものが まだ残るのか シエラは答えず 胸に弦を抱く 風なき石間に 一音が鳴る 石壁の奥で 古き鐘が揺れ 閉ざされた夜が ふたたび開く 王子リュシアンは問う ゼノン あれは味方か 楽師ゼノンは 窓辺で息を呑む 白き御旗が 丘を埋め尽くし 祈りの剣が 城門へ迫る あれは道を 過ぎる軍ではない まっすぐここへ 刃を向けている 弦に置いた指が 静かに止まり 幼き問いだけ 部屋に残った 扉を叩く 護衛の声がした 枢機卿様 すでに南門が 白き旗を 窓より見下ろし ライオネルは 目を伏せた ついにここまで 来たのかと 祈りの人は 息を落とした 祈りの剣よ なぜ祈りを斬る 白き御旗よ なぜ子らを追う 我が名を異端と 塗り替えるなら せめて明日まで 奪い尽くすな 地下の扉を 静かに開き 幼き子らと 母らを先へ 護衛の騎士は 松明を伏せて 声なき列を 夜へ導く 王子リュシアンは 列の中にいて 楽師ゼノンは 弦を胸に抱く 名を呼ぶことも 許されぬまま 白き城門を 影が抜けた 走れとも言わず 泣くなとも言わず ライオネルはただ 背中を見ていた 祈りから生まれた 剣の足音が 守るべきものの 明日を追い立てる 祈りの剣よ なぜ祈りを斬る 白き御旗よ なぜ子らを追う 我が罪ならば この胸で受けよう されどあの子らの 朝まで焼くな わたしが許した 剣であるなら この胸を裂く痛みも わたしの罪だ 奪われし地を 取り戻すため 与えた名が 人を踏みにじる それでもまだ 消してはならぬ 祈りは逃げる 小さき足音に 異端と呼ばれし その名の奥に 祈りを逃がした 人がいた ライオネル アルベリク 剣に奪われし その名に火を これぞ 祈りを斬られし 名を取り戻す 歌 歌がやむころ 廃城の風は エリアスの旗を 静かに揺らす 彼は問えずに 剣を見下ろす 誰の祈りを この刃は守る

