鏡の前なら決まるのに 君を見つけた瞬間ダメになる 髪も服も今日のため いつもよりちょっと頑張った なのに「おはよう」の四文字が 喉の奥で迷子になる 友達にはバレてる 「また見てる」って笑われる 違うって言えば言うほど たぶん顔に全部出てる 何千人の前だって 笑っていられる気がするのに 君ひとりが振り向くだけで 心拍数はもう限界 君の前だけ センターじゃない カッコいい僕はどこへ行った? 目が合っただけで 台本は真っ白 覚えた言葉も飛んでいく だけど君の前だけ 嘘じゃない僕になる 完璧じゃなくても 笑われたっていい ねえ 次に目が合ったら 今度こそちゃんと 君の名前を呼びたい 帰り道 偶然ふたり こんなチャンス 聞いてない イヤホン外した君が 「今日、静かだね」って笑う いやいやいや 君のせいです なんて言えるわけもなくて 「眠いだけ」 最悪だ もっとマシな答え あっただろ僕! 信号が赤になって 少しだけ嬉しかった あと何秒か 隣にいられる 青にならないでなんて 人生で初めて思った ステージの真ん中なら 迷わず前を向けるのに たった一人に伝えることが どうしてこんなに難しいんだ 君の前だけ センターじゃない 余裕なんてひとつもない 近づくたびに 不器用になって 笑顔さえぎこちなくなる だけど君の前だけ 強がらなくていい気がした キラキラしてない こんな僕まで 君が笑ってくれるなら 案外こっちの僕も 悪くないかも 次の角で 君とは反対方向 「じゃあね」 その一言で 今日が終わりそうになる 待って 声が出た 君が振り返る 言え 今だ 完璧じゃなくていい 「あのさ――」 何千人じゃなくていい たった一人に 届けばいい 君の前では センターじゃない それでも今日は逃げないよ 震える声も 赤くなる顔も 全部まとめて僕だから 君の前だけ 本当の僕でいたい 拍手もライトも ここにはないけど 今までで一番 勇気を出して 「今度の休み―― 僕と出かけない?」 一秒 二秒 君が笑った 「いいよ」 世界で一番小さなステージで 今日初めて僕は ちゃんと笑えた


