朱色の鳥居  霞む境界 風は止まり  時間は溶ける 私はここで  ただ待ち続ける 還る場所を失った 光の 粒を 皺(しわ)の刻まれた 温かな手 お疲れ様と  花を供えよう 天寿を全うし 安らかな眠りへ 背中を押す 冷たい風が吹く 途切れた鼓動  予期せぬお別れ 事故の傷跡、病の鎖 やり場のない 叫びが 霧に滲む 私は涙する 理不尽な運命に  拳を握り それでも門を 開かなければ 迷える魂が  凍えぬように 生と死の狭間で  祈りを捧げ 貴方を死者の国へ 導いて いく 自ら糸を  断ち切った者 奪われた命、怨嗟の瞳 なぜ?と問いかけても 答えはなくて ​怒りにも似た 深い悲しみが 私の胸を  強く締め付ける それでも役目は 終わることはない 黄泉への道に 灯を ともす 生きていた証  愛した記憶 すべてをこの門に 置いていきなさい 痛みも恨みも 未練の泥も 浄化の雨が  洗い 流すから 私は涙し、祈る 次に生まれる時は  光の中へ 重い扉を今、 引き開けて 魂の旅路を  見守り続ける さあ、行きなさい  振り返らずに 静寂が支配する 安らぎの 地へ 今日もまた一人 鳥居を抜ける 霧の向こうに  消えていく背中 私は守り人 明日もここで  貴方を 待っている