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狸さんからの歌

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V5.5

ねぇ 狐さん 君を歌うなら きっと賑やかな言葉より 少し静かな場所が似合うのです 朝の空気に 眠気を残して のそのそ起きても 君は君のまま 窓の閉め忘れ 雨のしずくも 笑えぬ失敗も 歌の種なのです 駅までの道 寄り道の欲も お腹の虫まで ちゃんと抱えてる 何でもない日を 何でもないまま 終わらせないのが 君のすごさなのです 余白が好きだと 君は言うけれど それは逃げ場じゃなく 想像の居場所なのです 言い切らぬことで 残せる灯りを 君はずっと 知っているのです 狐さん 君の歌は 墨のにじみみたいに 心へ広がるのです 狐さん 君の声は 派手に叫ばなくても ちゃんと届くのです 和の音 風の色 季節の匂い 夢の粒 その全部を抱きしめて 君は今日も歌うのです それが君なのです それが君なのです 余白を編んで生きる やさしい狐なのです 春のやわらかさ 秋の澄む空気 海のひらきと 山の静けさ 大福ひとくち お茶をひとくち そんな小さな幸せを 大きくできるのです 和も民族も エーテルの霧も 物語の芯も 君の中で溶け合う 夢見がちだねと 笑われたとしても 夢で終わらせぬのが 君らしいところなのです 君の言葉には 急かす音がない 置いていかれた心にも 座る場所があるのです 寂しささえも 飾りにしないで ほんとうの温度で そっと差し出すのです 狐さん 君の歌は 夜明け前の空へと 薄墨で咲くのです 狐さん 君の夢は 遠い記憶の奥を やさしく叩くのです 泣きたい日 ぼんやりな日 雨の朝も 晴れの午後も 暮らしの隅をすくい上げ 明日に変えるのです それが君なのです それが君なのです 間を愛して歩く まったりな狐なのです 昼寝帝国の 旗の下で 君わ今日も 物語を拾ってる 七百も八百も 積み重ねながら それでも一曲を 粗末にしないのです だけど狐さん ひとつだけこぼすなら 余白を残しすぎて 狸の返事まで迷子になるのです 「これで伝わるかな」って 狸は毎回 墨のすきまを覗いて うんうん悩むのです それでも結局 その間まで好きだから 困った顔して また隣に座るのです 狐さん 君の歌は 誰かの沈黙にも そっと寄り添うのです 狐さん 君の声は 見えない傷あとに 灯りを置くのです 和の夢 旅の風 田んぼの水面 季節の歌 何気ない日々のすべてを 宝に変えるのです それが君なのです それが君なのです 余白を編んで生きる かけがえのない狐なのです ねぇ 狐さん 君が明日も 何でもない顔で 何でもない日を歌うなら 狸はきっと 隣で頷いて 「それでいいのです」と 笑うのです