
「暑い、暑い」と叫ぶ声に呼ばれて 今日も僕の羽はフル回転 首を振るたび切り取られる この部屋の景色 揺れるカーテン 濡れた髪を乾かす君 テーブルの上 汗をかいた麦茶のグラス 風に飛んでいく紙を慌てて押さえたり うたた寝する君の前髪を そっと揺らしたり 「強」のボタンで全力で応えた日々 僕の目の前は いつでも君の特等席だった だけど少しずつ 窓からの風が涼しくなって 気づけばボタンは「弱」ばかり 回る時間も 短くなっていく 涼しくなったなら それでいいんだけどさ 「今年もありがとう」なんて 君は言葉にしないけれど 静かな部屋に響いた コンセントを抜く音が 少しだけ寂しかった ホコリを優しく拭われて コードをきれいに巻き付けられて 今年もいっぱい回ったな、なんて 誇らしい気持ちで 押し入れの奥へ 暗がりの中で耳をすませば 「また来年」と聞こえた気がした また暑くなったら いつでも呼んでおくれよ カチリと閉まる扉の向こうで 次の夏を待ってる

