Song Cover Image

名前のない終着駅

最終列車は音もなく 夜のレールをなぞっていく 窓に映った街明かりは もう生きている色じゃない 切符の文字は滲んだまま 行き先だけが消えている ホームの隅で風だけが 呼吸の数を数えていた 時計の針は止まらずに 時間だけを置き去りにする おりる理由も持たないまま 扉だけが静かに開く 名前のない終着駅 最後のベルは鳴らないまま 生きていたはずの昨日だけが レールの奥へ流れていく 名前のない終着駅 灯りは夜に溶けていく 帰る場所を失くした影が 静かに“ここ”へ降りていく カラにならない待合室 記憶だけが座っている 忘れたはずの痛みさえ まだ名前を呼ばれている 行き先のない案内板 風だけ文字を読み上げる 生きていた声はもうなくて 静寂だけが乗り継いでいく 終わりへ向かう列車じゃない 始まりへ戻る列車でもない ただひとつ “ここにいた”という事実だけを 夜に預けて走っていく そして気づく この車両の沈黙は 消失ではなく、準備だったと 名前のない終着駅 最後のベルは鳴らないまま 失くした季節を抱えたまま 誰もが静かに座っている 名前のない終着駅 朝はまだ辿り着けない 閉じた扉の向こう側で 夜がほどけて、光に変わる