曖昧な意識の底で 白い頁が指先に触れた 飾り気のない一冊が 掌にひんやり居座る 開くたび静けさが耳へ溶け 紙が低く震える その瞬間 私は知る ここにしか描けないものを 視線を寄せれば ペン先が微かな歌を始める 内側の空間が頁に応えて 小さな世界が息をする ドレッドノートブック 心の中の無垢な地図 勇気を大きく刻んで 臆病を塗り替える 恐れを越えた証を 幾度も力強く刻む 一行ごとに私は 新しい肌を纏ってゆく 乾いた夜の残響も 笑いの影もここへ落ちる 指先が走るたびに 過去は確かな歩みに変わる 書き重ねるほどに 一冊の厚みが増していく 忘れたはずの記憶さえ 新たなことばへと変わる ためらいが影になる瞬間 次の余白が静かに応え 書き続けることを望んでいるように 私の白地図は広がっていく ドレッドノートブック 揺れる想いを灯す器 消えかけた声を手繰り寄せ 本心を呼び覚ます ためらわず綴った願いが 小さな道しるべになり 閉ざした先へと 新しい扉を開いていく 誰の手も届かない 私だけの軌跡がある どんな夜でも奪えない 残した文字の熱も ドレッドノートブック なくてはならぬ私の核 沈黙を言葉で満たし ゆっくりと強さへ変えてゆく 書き尽くした頁たちが やがて穏やかな光となり そこに立つのは 刻まれた私の名 怯まず書いた言葉だけが 私を生かす


