Song Cover Image

銀河鉄道に乗って…

+ Show full styles
V5.5

私は、モニュメントの柱が見える丘。 草は、夜風にゆっくり揺れていた。 星を見ていた。 それだけだったはずだ。 いつの間にか、眠ってしまったらしい。 なぜなら、そこにはひどく懐かしい気配があったから。 [Verse 1] 君は、向かいの席へ腰かけていた。 「久しぶり。」 そんなふうに、言ったような気がした。 僕は、うまく返事ができなかった。 喉の奥が、少し痛かった。 泣いていることに気づいて、慌てて顔を伏せたけれど、君は昔みたいに困った顔で笑って、 「そんな顔するなよ。」 と、窓の外を見ていた。 [Verse 2] 車掌さんの靴音が、木のゆかを静かに渡っていきました。 せきたんの匂い。 冷たい空気。 青い切符。 ガラス窓の向こうでは、白い尾を引いた星々が、さざれのように流れておりました。 「どこまで行くの。」 僕が尋ねると、 君は少し考えてから、 「まだ先じゃないかな。」 と言いました。 列車は小さく身震いをして、 夜の銀河を進んでいったのでした。 [Chorus 1] ぽろりや ぽろりや きらりや きらりや 星降る丘の風車 ガラスの小鳥は目を覚ます ゆらりや ゆらりや ふわりや ふわりや ああ 夜汽車は歌うよ ああ 窓辺は笑うよ 君となら、どこまでも しろがね野原を越えてゆこう [Verse 3] 僕らは、ダイヤの河原を歩きました。 琥珀いろの砂は靴の先で、小さく鳴りました。 魚が背をきらめかせ、銀河の浅瀬を泳いで、 遠くの灯台には、星屑めいた輝きが、静かに回っておりました。 君は、 「ずいぶん変わった鳥だねえ。」 と、空を指しました。 僕が見上げると、はためく翼の群れが、しずかに夜を渡っていくのです。 「本当だ。」 僕は、子どもみたいに笑いました。 [Verse 4] 発車の鈴の音が、木の天井へ淡く響きました。 機械油の匂い。 乾いた空気。 青い切符。 窓の向こうの星々は、少しずつ遠ざかるように、静かに流れておりました。 「もうすぐかな。」 君がつぶやくと、 僕は、少し黙ってから、 「そうかもね。」 と答えました。 列車は、小さく揺れながら、 南の銀河を進んでいったのでした。 [Chorus 2] ぽろりや ぽろりや きらりや きらりや 星降る丘の風車 ガラスの小鳥は空を見る ゆらりや ゆらりや ほろりや ほろりや ああ 夜汽車は歌うよ ああ 窓辺は揺れるよ 君はなお その先へ しろがね野原を越えてゆくだろう [Bridge] そのとき、僕は、君の切符を見ました。 指先に挟まれた、小さな青い紙きれを。 ああ、だめだ。 なんだか、分かってしまいました。 面白い本を読んでいて、残りのページが急に薄くなったときみたいに。 まだ笑っていたいのに。 まだ訊きたいことがあるのに。 まだ一緒に景色を見ていたいのに。 もうすぐ、終わってしまう。 いや。 まだ、何かあるはずだ。 もう少しだけ、あなたと居られる方法。 もし、そんなものが無いのなら。 私のからだが、ひゃっぺん灼かれてもかまわない。 だから、あなたのページに挟まれた栞を、 私の本へ移させてくれ。 あなたも、まだ生きていたかったはずだ。 まだ、見たい景色があったはずだ。 言い残したことも、聞きたかった声もきっとあっただろう。 それなのに。 どうして、そんなふうに笑えるのですか。 どうして、私を置いて、先へ行けるのですか。 私が思い違いしているなら、最後の一頁の余白に小さく書き残してください。 [Outro] 目が覚めた。 背中は大地に体温が奪われ、冷たくなっていた。 丘には、もう何の気配もない。 星だけが、変わらずそこにある。 私は、少し泣いてしまう。 あなたの声を思い出せなくなるのが怖かった。 だから、もう一度だけ、眠れないかと思った。 けれど冷たい夜風は、ほほ笑む星たちは 私を起こしたままなのでした。