
蝉しぐれに 揺れる白い花 写真の中で 今日も微笑んでる 触れようとした指先は 少しだけ 風をつかんだ 灰になった手は もう握れない それなのに あの日のぬくもりだけは 消えない 「ばあちゃん子は 三文損するよ」 笑いながら返した 「いいよ お金より大事なものを もう貰ってるから」 目を閉じなくても そこにいる 優しい笑顔は 色褪せない 人は 灰になるんじゃない 誰かの優しさになって 明日を歩いていく 「国のため」 その一言で 遠い海へ 消えた夏 帰りを待つ窓辺だけが 季節を数えていた それでも異国の街角で 交わした笑顔を見た日から 憎むべきは 人じゃないと あなたは 静かに笑っていた 季節は何度も巡る 私も少しずつ歳を重ねる あの日は分からなかった言葉が 今日になって やっと分かることがある 思い出は 過去じゃなく 未来でも増えていくんだね ねぇ 見ていてね 私は あなたにはなれない でも あなたがくれた優しさなら 誰かへ渡していける 忘れないよ これからも 見守っていてね あなたと交わした約束は 今日じゃなく 明日へ続いていくから 写真の笑顔が 少しだけ 嬉しそうに見えた

