
濡れた舗道に紫が揺れる 扇子の影でグラスが鳴った 目を逸らすならそれも自由 でも足音はこちらへ向かう 鏡の向こうで視線がほどける 香りを追うほど距離は近づく 指先ひとつで空気が変わる 言葉にする前に熱は知ってる 欲しいなら来ればいい 急ぐ必要なんてないでしょう 理性のフリをした薄いヴェール 剥がれる瞬間まで眺めていたい また同じ鼓動 また同じ顔 微笑めば答えまで見えてしまう きれいな予定調和じゃ この夜は少し長すぎるわ 欲しいなら来ればいい 逃げる理由もいらないでしょう 触れる前から熱はわかる でも簡単なら面白くない 今夜くらい私の予想を外して その理性でもう少し遊んで 甘いだけでは飽きてしまうわ 堕ちるならせめて綺麗に ネオンを滑った濡れた足跡 同じ角度でグラスが傾く 昨日と違う香りを選んでも 返る眼差しはよく似ている 扇子を閉じればざわめきが揺れる 誰かがまた一歩 境界を越える 悪くはないのよ むしろ愉しい ただ 読めない答えが見てみたい 夜明け前 冷えたグラス ネオンの色も薄くほどける 朝になれば名前はいらない 香りも熱もここには残さない それでいいはずなのに 静けさだけが少し長い 退屈なんて呼ぶほどじゃない まだ知らない何かを 待つほどでもない 欲しいなら来ればいい その余裕まで崩さずにいて 目を逸らさずに息をしてみて 予定どおりじゃ美しくない 今夜くらい私の予想を外して 最後の一線 そのまま越えずに 簡単な熱じゃ終われないでしょう あなたはどこまで平気かしら ネオンの向こう まだ誰もいない 夜はいつもどおり きれいに終わる だから次も笑っていられる 答えはまだ知らないままで

