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**第六話 『生ききった証 ― 命のバトン』

長い夜を越えたあと 静かな光が 部屋の隅を照らした 名前を呼ぶ声は もう聞こえないのに その温度だけが 確かに残っていた “生ききった” その空気が 静寂の中で やさしく揺れていた 弱い息の合間に かすれた声で伝えてくれた 「だいじょうぶだ」 「おまえなら大丈夫だ」と 細い指が 僕の手を握り返し その力が 言葉より深く胸に刻まれた 涙ひとつ落とすたび 僕の中の何かが 静かに動き出した 守られてばかりだった僕が 今ようやく知った 誰かの人生が 自分の中で生き続けるということを “命は終わらない” そう信じられた あの温かな手のぬくもりで たしかに受け取った あなたの生ききった証を 胸の奥で 炎のように灯して 僕は歩いていく 涙は悲しみだけじゃない 誇りを抱くための力にもなる ――命のバトンが   今 僕の手の中にある 季節がひとつ、またひとつ 静かに色を変えて あなたの不在に慣れてしまいそうな自分が どこか怖かった けれど ふとした瞬間に 笑い方が似てきていることに気づいた 歩き方も 言葉の選び方も 気がつけば あなたに寄り添っていた 生きるということは 誰かと重なりながら進むこと そう教えてくれていたのだと知った あの日、あなたがくれた 「生きろ」の一言は 今も僕の背中を押し続けている たとえ道に迷っても 大丈夫 あなたの声が 胸の奥で道しるべになるから あなたが残した やさしさも 痛みも 祈りも すべて抱きしめて進む 過去は消えない だからこそ未来を照らせる ――この手のバトンは   次の光へと繋がっていく 夜空を見上げると あなたの声が 風の向こうから聞こえた気がした 「生きていけ」 「笑っていけ」 「おまえの道を歩け」 その声は もう返事をくれないのに いつまでも僕の中で温かいまま これが命の不思議 これが愛のかたち 生ききった証は 言葉じゃなく 背中で伝わるものだった 守るように 導くように あなたが残してくれた光が 今 僕の胸に燃えている たとえあなたがいなくても 僕はひとりじゃない ――このバトンは   未来へと続いていく   命の証として あなたの生きた時間が 僕という未来を照らし続ける 朝の光の中で 僕は静かに歩き出す あなたから受け取った 命の灯火とともに その先の世界へ 確かに続いていく道を