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雪に惑う

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V5.5

白き野を 風が裂く 遠き陣鐘 雪に沈む 幾千の足跡が 朝まだきの雪を踏む 誰も振り返らぬまま 白き息だけ空に残し その背には何がある 守るべきものなのか 失いたくない何かなのか 知らぬまま見送った 椿ひとつ 手に残る あの日渡された簪 まるであなたの瞳のようだ と 春になれば返事を と 言葉の意味も知らぬまま 雪は絶えず降り続く 名も知らぬ者の肩へ 風は絶えず吹き続く 別れの言葉をさらいながら なぜ彼らは 帰れぬ道へ向かうのか なぜ微笑み 手を振るのか その意義を知らぬまま 黒き旗は波のよう 白き原野を埋めてゆく 鉄の響き 矢の雨が 冬の静寂を裂いてゆく 散るのなら 留まればよくて 失うのなら 離れればよい なのになぜ進むのか わけを知らぬまま 目は奪われて あの山で助けた命を ふとあの中に探している 語るなと約束をした 結末を見届けるかのように 声は絶えず遠く響く 白き椿を染めながら 風は絶えず 吹き荒ぶ 鬨の声 空に響き 短き命 燃やすように駆けてゆく その輝きは 雪明かりよりも 白く眩しく 白と黒だけの世界で ただひとつ残る赤 儚く散りゆく けれど ああ きっと あの言葉も思いも 大切だった気がして 春を待つのか 帰りを待つのか それすらも答えられず 雪は静かに降り積もる 赤い椿を埋めるように 風は静かに吹き抜ける 別れの名残をさらうように 遠くひとつ 見失った影を探しても 何もかも 白の中 春になれば 返事が欲しいと そう言っていた気がした 答えを探すけれど 遠く白く 霞んで 雪に惑い ただ 春を待つ