
『狸はちゃんといるのです』 ねえ たぬきって 本当にいるの? ふふ…… ちゃんと いるのですよ 海の向こうの 誰かが言った 「たぬきは日本の 幻獣でしょう?」 葉っぱをお金に 変えるとか おなかをぽんぽん 鳴らすとか それは昔の お話で わたしも好きな お話で けれども ほらね 夕暮れの あぜ道の先に 影ひとつ ちょっと丸くて 短い足 目もとの黒は 生まれつき 木の実に虫に 季節のごはん そっと暮らして いるのです いるのです いるのです おとぎの国だけじゃ ないのです 月の下でも 雨のあとでも 日本の里に いるのです 化けるのは 物語 歩くのは この足で 伝説になるのも 嬉しいけれど ちゃんと見つけて くださいな アライグマさんと 間違えられて 困ることだって あるのです まんまる顔の 犬の仲間 ええ そこは本当 そうなのです 山と畑の そのあいだ 夜の小道を とことこと 人が通れば こそっと隠れ 草の葉だけが 揺れました 冬には毛並みも ふっくらと 寒さに備えて ころころり 怖がりだけど 好奇心 今日も静かに 生きてます いるのです いるのです 絵本の中だけじゃ ないのです 月の下でも 雪の朝でも 日本の森に いるのです 魔法なんて 使えない 空を飛んだり しませんが この小さな 命だって 不思議に満ちて いるのです もしもわたしが 化けられたなら ちょっと驚かせて みたいけど 木の葉の帽子も 持ってないし おなかの太鼓も 叩きません ふふ…… 期待はずれ でしょうかね? それでも 土の匂いをまとい 今日もこの里で 息をする いるのです いるのです 夢でも幻でも ないのです 黒い目もとの 小さな顔で ひっそり暮らして いるのです 化ける話も 好きだけど ほんとの姿も 見てほしい 海の向こうの あなたにも いつか会えたら いいですね さてさて そろそろ 帰りましょうか 夜の小道を とことこと たぬきは…… ちゃんと いるのです

